パレットークおすすめ図書vol. 4 トランスジェンダーについて学べる本3選

今月、11月はトランス啓発月間です。

トランス月間とは、トランスジェンダーのコミュニティと人々を祝福し、認識を深めるための期間とされています。また、この月間中には、反トランスの暴力行為によって命を奪われたトランスジェンダーの人々の記憶を称える「トランスジェンダー追悼の日」(11月20日)も含まれています。

そんなトランス月間、あらためてトランスジェンダーについて知りたいと感じている人もいるかもしれません。

そもそもトランスジェンダーとは、生まれたときに割り当てられた性別とは異なる性自認を持つ人のこと。大まかには、次のような性のあり方が含まれています。

  • トランスジェンダー男性:出生時に割り当てられた性別が女性で、男性の性自認を持つ人
  • トランスジェンダー女性:出生時に割り当てられた性別が男性で、女性の性自認を持つ人
  • ノンバイナリー:既存の男女二元論には当てはまらない性自認を持つ人

性の多様性に注目が集まることも増えてきた今日ですが、残念ながらまだまだ様々な差別や困難に直面するトランスジェンダーの当事者が多くいます。世界的に見てもトランスジェンダーのコミュニティに対して差別的なバッシングが行われ続けている現状もあり、最近ではアメリカ合衆国の大統領選でトランプ氏が勝利したことから、コミュニティにとって厳しい時代が続くことが予想されています。

「女性の安全が損なわれるんじゃないの?」
「スポーツなどが公平に行われることも大事じゃないの?」

こうした素朴な疑問や不安を抱く人も多いかもしれませんが、性のあり方に関わらず、誰もが安心して生活を送れる社会を実現するために、まずはこうした問いに対する答えも含め、「正しい知識」を身につけることが必要です。

そこで、今回はトランスジェンダーについて学べるおすすめの本を3冊ご紹介します。11月のトランス啓発月間をきっかけに、一緒に学んでみませんか?

①素朴な疑問が浮かんだら、まずはこの本!『トランスジェンダーQ&A – 素朴な疑問が浮かんだら』

”LGBT”やそこに含まれるトランスジェンダーという言葉は、今では多くの人が知る一般用語となってきました。しかし一方で、冒頭でも説明したトランスジェンダーの定義には、普段は耳慣れない表現が立ち並んでいます。

たとえば、「生まれたときに割り当てられた性別」。割り当てられるとはどういうことなのでしょうか?少し前までは、トランスジェンダーの説明として「心の性と身体の性」という表現が多く使われ、目にしたことのある人も多いかもしれません。では、この「身体の性」と「割り当てられた性」にはどのような違いがあるのでしょうか?

冒頭でも、トイレやスポーツをめぐる疑問や不安について少し触れましたが、トランスジェンダーや性自認などをめぐって、当事者ではない人が理解しづらい部分があることも事実だと思います。

そもそも「ジェンダー」という言葉も、一般的に使われる言葉でありながら実際のところ理解するのが非常に難しい、複雑な概念でもあります。そんななかで「押し付けられるジェンダー役割がなくなれば、すべて解決するのでは?」と考える人もいるかもしれませんね。

そんなトランスジェンダーをめぐる疑問が浮かんだら、まずはこの『トランスジェンダーQ&A – 素朴な疑問が浮かんだら』を読んでみてください。タイトルにもあるように、本の中では性別やジェンダーをめぐる基礎知識から、トランスジェンダーの人々が抱える困難の実情、そしてSNSでも多く流れてくる「不安・恐怖・疑問」に対する答えが網羅的に書かれています。

たとえば「性別を変えるってどういうこと?」というトランスジェンダーやジェンダーに関わる疑問から、トイレや公衆浴場、スポーツなど具体的な性別分けスペーに関する疑問など、章ごとに読むことができます。

SNSで素朴な疑問を投稿する前に。トランスジェンダー当事者を傷つけてしまわないか不安なときに。ぜひ多くの人に読んでいただきたい一冊です。

トランスジェンダーQ&A – 素朴な疑問が浮かんだら』高井ゆと里、周司あきら著(2024年、青弓社)

②そもそもトランスジェンダーの問題ってどんな問題?『トランスジェンダー問題 – 議論は正義のために』

そもそも、トランスジェンダーについて議論が繰り広げられるとき、はたしてそれはどのような立場から議論が繰り広げられているのでしょうか?

2冊目にご紹介するのは、「難しい問題」とされてきたトランスジェンダーをめぐる(ときに当事者を無視して繰り広げられてきた)議論に切り込む一冊『トランスジェンダー問題 -議論は正義のために』です。

トランスジェンダーの人々が具体的に直面する困難や、一言でトランスジェンダーといっても多様な状況を生きる人々に光を当てながら、世界中で繰り広げられるトランスジェンダーコミュニティに対するヘイトやバッシングについても取り上げています。

また、記事の冒頭でもアメリカ合衆国の大統領としてトランプ氏が再選したことに触れました。彼の全任期中から全米でトランスジェンダーの権利を奪い去る法律が数多く成立し、現在もその波は続いています。再びトランプ氏が大統領となることで、コミュニティにとってより過酷な状況が生まれてしまうことが懸念されますが、本書ではトランプ政権はじめとする国家とトランスジェンダーの権利についても詳細に書かれています。

トランスジェンダーの方々が直面する現実や、その他社会の様々な問題とのつながり、そしてフェミニズム運動との交わりに知りたい人にもおすすめなエネルギッシュな一冊。ぜひ読んでみてください。

『トランスジェンダー問題 – 議論は正義のために』ショーン・フェイ著、高井ゆと里訳(2022年、明石書店)

③まだまだ知られていないノンバイナリーについて知ろう『ノンバイナリーがわかる本– heでもsheでもない、theyたちのこと』

ノンバイナリーとは、既存の男女二元論には当てはまらない性のあり方を持つ人のことを指します。日本語ではノンバイナリーとあわせて、「Xジェンダー」という性のあり方も知られるようになってきました。

しかし、私たちが生きる社会には根強く男女二元論が広がっています。そんな中で、「男でも女でもないってどういうこと?」と疑問を持つ人も多いかもしれません。

本記事最後にご紹介するのは、そんなノンバイナリーについてわかりやすく、そしてとても詳しく説明されている『ノンバイナリーがわかる本 – heでもsheでもない、theyたちのこと』です。

サブタイトルの「they」というのは、英語圏で性別を規定しない三人称の代名詞としてSheやHeの代わりに使われることも増えてきたものです。

こうした言語のなかにも広がる性別二元論を一つひとつ紐解き、職場や学校におけるノンバイナリーの実情、またメンタルヘルスや医療の問題についてわかりやすく解説されている本書は「そもそもジェンダーってなんなんだろう」という根本的な疑問をより深めていくうえでもとても有意義な一冊です。

「もしかして、自分もノンバイナリーかも?」そんな風に感じている方にとっても、きっと多くのヒントが見つかるのではないでしょうか。

『ノンバイナリーがわかる本 – heでもsheでもない、theyたちのこと』エリス・ヤング著、上田勢子訳(2022年、明石書店)

以上、トランス啓発月間にあらためてトランスジェンダーについて学ぶ上でのおすすめ図書を3冊ご紹介しました。より多くの人が自分らしく安全に暮らせる社会を築いていくためにはイメージや偏見ではなく、正しい知識をもとに議論を重ねていくことが大切です。

気になる本や、章から読み進めるのもOK!ぜひ一緒に、トランスジェンダーについての正しい知識を深めていきませんか?

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