【マンガで解説】「リスロマンティック」という言葉を知った話
「恋することはあるけれど、その人と付き合いたくはない」
「相手から恋愛感情を向けられたいとは思わない」
そんな経験を表すセクシュアリティがあることを知っていますか?
「リスロマンティック」とは、他者に恋愛感情を持つけれど、その相手から恋愛感情を返してもらうことや交際することを強く望まないセクシュアリティです。
本記事では、そんな「リスロマンティック」という言葉にしっくりきた方の体験談をマンガで紹介し、リスロマンティックにまつわる誤解なども取り上げていきたいと思います。
リスロマンティックとは
はじめにも紹介したとおり、リスロマンティック(Lithromantic)とは、他者に恋愛感情を抱くことはあるものの、その相手から恋愛感情を返してもらうことや、交際することを望まない恋愛的指向のことを指します。
リスロマンティックの人は、誰かに対して恋愛的な魅力を感じ、恋焦がれたり、一緒にすごす時間を楽しんだりすることがあります。しかし、「相手からも自分に好意を向けられることを望んでいない」という点が特徴です。
“典型的”とされる、誰かに恋愛的に惹かれて、その相手と両思いになりたいと感じる「アロロマンティック」とは違う形で恋愛的な惹かれを経験しているため、リスロマンティックというアイデンティティはAロマンティック・スペクトラムに含まれると考えられることがあります。
他の恋愛的指向との違い
リスロマンティックはまだまだ広く知られていないこともあり、Aロマンティック・スペクトラムに含まれる他の恋愛的指向と混同されやすいかもしれません。以下ではそれぞれの違いについて確認していきます。
狭義のAロマンティックとの違い
狭義のAロマンティックは、他者に恋愛的な魅力を感じないという点で、恋愛感情を抱くことがあるリスロマンティックと異なります。
デミロマンティックとの違い
デミロマンティックは、強い感情的なつながりを築いた相手にのみロマンティックな魅力を感じます。恋愛感情を抱く場合があるという点では同じですが、最終的に恋愛感情が相手からも向けられることに抵抗感がないという点で、リスロマンティックとは異なります。
グレーロマンティックとの違い
グレーロマンティックとは、アロロマンティックとAロマンティックの間に位置する人を包括した恋愛的指向です。そのためリスロマンティックは、グレーロマンティックという傘の下に入る恋愛的指向であるといえます。ただし、グレーロマンティックを自認する人の中には、誰かと両思いになることに抵抗感を覚えない人もいます。両者に重なる部分はあるものの、グレーロマンティックな人々がすべてリスロマンティックであるわけではありません。
よくある誤解・偏見
リスロマンティックというアイデンティティには、「気まぐれ」や「飽きっぽい」というような否定的なイメージがつきまといがちです。以下ではよくある誤解や偏見について解説します。
「蛙化現象ってことでしょ?」
蛙化現象とは、元々は「好きな相手から恋愛感情を向けられたことでその人への恋愛感情が消える」という心理的な動きを指す用語でしたが、最近では「一緒にすごす時間が増えることでこれまで見えていなかった相手の一面を知り、恋愛感情が一気に冷める」というような意味でも使われています。
「両思いになりたかったけれど、なってみたら/付き合ってみたら冷めてしまった」という状況を指す蛙化現象に対して、リスロマンティックという恋愛的指向には、誰かに恋愛感情を寄せることはあっても、相手から好意を向けられることを望まないという特徴があります。
このことを踏まえると、はじめから両思いやお付き合いを望まないリスロマンティックについては、必ずしも「蛙化現象と同じである」とは言えません。
「気まぐれで飽きっぽいだけじゃない?」
否定的な意味合い含んで発せられることも多いこの発言ですが、リスロマンティックの人は、気分が変わりやすいのではなく、むしろ相手からの好意を求めないという点でその感情は一貫しています。
これまで社会の中で当然視されてきた恋愛やパートナーシップに関する価値観とは異なる性のあり方については、しばしば「倫理的ではない」というような評価が下されてしまうことがあります。
多様な性のあり方に関して正しい知識を深めることと同じように、そうした社会の中の価値観の押し付けについても見つめ直すことがとても大切です。
「運命の人に出会えば変わるよ」
たしかにセクシュアリティは流動的なもの。ですが、だからと言って現時点での性のあり方が「変わるべきもの/変わっていくもの」とは言えません。
リスロマンティックを始め、AセクシュアルやAロマンティックなどは「また経験していないだけ」という偏見を受けやすいセクシュアリティでもありますが、そうした言葉の背景には「恋愛や性愛を経験してこそ一人前である」というような価値観も潜んでいるかもしれません。「いつかは誰かとの両思いを望むようになるよ」と言えてしまうのは、そのあり方が「当たり前」とされているから、と言えるでしょう。
本人がリスロマンティックというラベルに現時点でしっくりきているのであれば、尊重されるべきです。
さいごに
リスロマンティックは「ただの気まぐれ」のように誤解されやすいアイデンティティですが、個人の恋愛的指向の1つとしてたしかに存在しています。
「恋をしたら両思いになりたいのが普通だ」というように、恋愛感情をめぐる関係の築き方を押し付けるのではなく、それぞれにとって心地よく、無理のない関係を築ける社会にしていくことが大切なのではないでしょうか。
今回紹介したマンガの主人公のように、この記事を読んで「自分だけじゃないんだ」と感じる人がいれば嬉しいです。
パレットークでは、リスロマンティックの方の体験談を随時募集しています。こちらのフォームよりお寄せください。