【マンガで解説】ジェンダー平等を妨げる「家父長制」って?「『長女』として育てられた私の話」から考える
みなさんは「女の子だから〇〇するべき」という言葉にモヤモヤした経験はありますか?
たとえば、
「女の子なんだから、そんなはしたないことはやめなさい」
「料理が苦手?そんなんじゃお嫁に行けないよ」
「優しい旦那さんを見つけて子どもを育てるのがあなたの幸せだよ」
などなど…
こうした性別に基づく一方的な決めつけや期待の背景には、「家父長制」という社会のあり方が潜んでいます。
家父長制とは、家族のなかで最年長の男性がリーダーとなる社会、または男性が支配し、自分たちの利益のために権力を行使する社会のこと(Cambridge Dictionaryより)。
今回の記事では、そんな家父長制が、私たちの生活にどのような影響を与えているのかについて、マンガを通じて一緒に考えてみたいと思います。
「女の子なんだから〜」は “マナー”のひとつ?
冒頭で挙げたような「女の子は〇〇するべき」という考え方は、これまで“当たり前のマナー”のように扱われ、長い間、問題視されてきませんでした。
しかしこれは、ジェンダーに関するステレオタイプ(固定観念)にあたります。
たとえば、
「女の子なんだから、そんな言葉遣いはやめなさい」
「男の子の顔を立てて、サポート役にまわるべき」
「身だしなみに気をつけないと、お嫁に行けないよ」
こうした発言の裏側には、共通して「女の子は優しく、従順で、家庭的であるべき」といったジェンダー規範が存在しています。
限定的な女性像が「普通」とされると、そこに当てはまらない人は「未熟」「おかしい」「マナー違反」などとみなされるようになります。
その結果、学びやキャリアの選択肢が狭められてしまうこともあります。単に感覚として息苦しさを感じるだけでなく、“どう生きるか”という根本的な自由さえも制限されてしまうという問題があるのです。
家制度廃止から80年近く経っても根深い家父長制
ここまで見てきたような「らしさ」を押し付ける規範の根底には、日本社会に長く根づいてきた家父長制の影響があります。
家父長制とは、家族のなかで最年長の男性がリーダーとなる社会、または男性が支配し、自分たちの利益のために権力を行使する社会のこと。
この家父長制という支配のシステムには、社会の制度や秩序の基本を、男性が家長となり女性や子どもがそれに従う形の「家」という単位で考え、「個人」よりも優先させるという特徴があります。
男性優位を正当化する家父長的な価値観は、明治期の家制度をきっかけに日本社会に広く浸透していきました。そんな家制度は1947年、日本国憲法の施行によって廃止されましたが、それから80年近く経った今でも様々な形で私たちの暮らしに影響を与えています。
たとえば…
価値観
- 「女性はみな生まれつき包容力があり、細やかな物事に向いている」
- 「女性は結局は “家に入る” のだから、高等教育を受ける必要がない」
- 「女性は性や身体について積極的に話したり、自分で決めたりするべきでない」
制度
- 「世帯単位」で記載する戸籍制度
- 約95%が夫の姓に統一する理由となっている夫婦同姓制度
- 男女間の家族形成を前提とし、未だに同性婚を認めていない婚姻制度
慣習
- 結婚式や葬式で、「嫁の親族は控えめに」「長男が喪主」などとされる。
- 墓の継承が家単位で行われ、「墓は長男夫婦が守る」「女性は実家の墓に入れない」などとされる。
- 介護の負担が、未婚の娘や嫁に集中しやすい。特に「長男の嫁」に対する期待が重くのしかかる。
これらはいまも私たちの暮らしに残る“家制度の名残”のほんの一部にすぎません。
「家父長制」や「家制度」と聞くと、「昔のこと」であり、「今の私たちには関係ない」と感じる方も多いかもしれません。しかしここまで見てきたように、今も私たちの生活に大きく影響を与えているのです。
子どもに「こうあるべき」の呪いをかけないために
マンガでは、幼いころから「女の子なんだから」「長女なんだから」と言われ続けてきた主人公の経験が描かれています。
一見「しつけ」や「アドバイス」のように思える言葉でも、知らず知らずのうちに子どもの自尊心を傷つけ、「ちゃんとしなきゃ」「期待に応えなきゃ」と自分の気持ちを押し殺す原因になってしまうおそれがあります。
しかし、子どもは守られる対象であるだけでなく、大人と同じように権利をもつ一人の人間です。
国連の「子どもの権利条約」では、子ども(18歳未満の人)が人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、人権を保障されるべきであると定められています(第2条)。
そして条文の中では、自由に意見を述べ、その意見が尊重されることについても記されています(第12条)。
性別を理由に「こうあるべき」と決めつけられることで、子どもたちの選択肢が狭まり、声が軽んじられてしまうと、基本的人権の侵害にもつながります。
本来、やりたいことや得意なことは人それぞれ違って当たり前なはず。大切なのは、本人がどんなふうに生きたいか、何を大事にしたいかを自分で選び取れることなのではないでしょうか。
さいごに
この記事では、「女の子なんだから〜」という言葉の裏に潜む、家父長制の影響やその名残について見てきました。
ジェンダー平等を実現し、誰もが自分らしく尊厳をもって生きられる社会をつくるには、私たちの中にある「当たり前」を問い直すことがとても大切です。
「家父長制」という言葉に少しとっつきにくさを感じたかもしれませんが、それは“過去の制度”ではなく、いまを生きる私たちの問題でもあります。
パレットークではこの先2週間にわたり、家父長制をメインテーマにさまざまな発信を行っていきます。難しいトピックではありますが、あらためて一緒に学び、考えてみませんか?
参考
https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_rig_all.html