恋人との関係をきっかけに考えたバウンダリー(境界線)の話。男女のカップルが部屋でゆっくりしているイラスト。
誰かと一緒にいる時に「もしかして機嫌が悪いのかな…?」「自分、なにかしたかな…?」と不安になり「なんとか機嫌を取らなきゃ…!」とプレッシャーを感じてしまうことはありませんか?今回いただいたエピソードは、恋人に対してそう思ってしまっていた女性が、「バウンダリー(境界線)」を意識することの重要性に気づいていくお話です。
これは、私が彼氏との同棲生活で直面した「バウンダリー(境界線)」の話です。今から6年前、私は当時通っていた大学の同級生と付き合うことになりました。サキ「気も合うし、優しい人だし、一緒にすごす時間をいつも楽しみだな〜」
しかし、卒業して同棲を始めた頃から…。テレビを見ているサキ、ソファで横になってスマホをいじっている圭一。圭一はスマホを置いてため息をついている。それに気づくサキ「機嫌悪いのかな…?」
サキ、機嫌を取るような明るい声で「ねえねえ、今日のご飯どうする?」圭一、そっけない態度で「ん〜、なんでもいいけど…サキは食べたいものあるの?」
サキ、「返事そっけな…!」と圭一の態度に焦る。サキ「やっぱなんか怒ってる…?私なんかしたっけ…?」一緒に暮らすようになれば、もちろんテンションが低いときもあるし、少し機嫌が悪いこと、元気がないこと、そういう相手の一面も目にするようになるもの…。
とは思いつつ「自分のせいで機嫌悪くなっているんじゃ…!機嫌をとらなきゃ!」とプレッシャーを感じ、疲れてしまう自分もいました。という話を、ある日高校時代の友達に愚痴っていたところ…。
友人のカナエ「てか、サキがいつも圭一くんの機嫌を取らなきゃいけないのかな?」サキ「え?」カナエ「だって人の機嫌ってその人の持ち物でしょ?それの責任をサキが背負う状況って、バウンダリーゆるくなっちゃってるって思うよ〜」サキ「バウンダリー?」
その友達が教えてくれたのは…バウンダリー(個人の境界線)とは、「ここまでが自分、ここからが他人」をわける見えない線やルールのこと。ノートに書いて説明するカナエ「サキと圭一くんがそれぞれ自分の荷物…感情を持ってるとするでしょ?」サキと圭一がそれぞれ自分の荷物(感情)を持っている絵。
カナエ「健全なバウンダリーのときは、お互いに相手の荷物を気に掛け合ってる。けど触ってはいない。厳重すぎたり、ゆるすぎたりはそれぞれこう」厳重すぎるとき、サキがまったく圭一の荷物を気にしていない。ゆるすぎるとき、サキが圭一の荷物まで持っちゃってる。
カナエ「大切な人の気持ちを気にするってのはもちろん大事なことだけど、あくまで「相手の機嫌は相手のもの」。お互いにもう大人だし、もし相手に不満があるなら、それは言葉でしっかり伝える責任も相手にあるって、覚えておけるといいかもね」サキ「なるほど〜」
カナエ「もちろん、相手がもしなにかを伝えてきたら、きちんと耳を傾けるのも大切なコミュニケーションだけどね!」それ以来、彼の機嫌が悪そうに見えるたび…「相手の機嫌は相手のもの相手の機嫌は相手のもの!」そう思う練習をし続けることで、勝手に彼の気持ちを想像して「自分のせいかも…」と悩むこともなくなりました。
あとから知った話ですが、実際当時の彼は特に不機嫌だったわけではなかったそうです。圭一「ただオフモードになっちゃってたんだ、ごめんね。なにかあったらちゃんと伝えるようにするけど、もし心配になったら言ってね」今も、いろんな状況で「自分の気持ちと相手の気持ちの境界線を意識してどっちも尊重する」を練習中です。バウンダリーという考え方を知ることができて、よかったなと思った体験でした。

【マンガで解説】バウンダリーを「健全な状態」に保つには?

恋人との関係をきっかけに考えたバウンダリー(境界線)の話

みなさんは、誰かと一緒にいるときに

「もしかして機嫌が悪いのかな…?」
「自分、なにかしたかな…?」

と不安になり、「なんとか機嫌を取らなきゃ…!」と、ひとりでプレッシャーを抱えてしまった経験はありませんか。

今回の記事では、恋人との同棲生活のなかでそうした瞬間が増え、ストレスを感じるようになった女性のエピソードを紹介します。

そのうえで、自分の心と身体を守るために大切な考え方である「バウンダリー(境界線)」について、一緒に考えてみたいと思います。

バウンダリーって何?

バウンダリーとは、「私は私で、あなたはあなた」というように、ある人がほかの誰かとの間に設ける心理的、感情的、身体的な境界線のこと。

バウンダリーの分厚さや位置は人それぞれで、「どこにいるか」「誰といるか」などによっても変化します。

皮膚が外からの刺激や異物から身体を守っているように、自分と他者を区切り、自分の気持ちや権利を守ってくれるバウンダリー。

しかしこの境界がゆるむと、ほかの人との距離があいまいになり、相手の考えや感情が自分のものと混ざってしまうことがあります。

「 『自分の気持ち』と『他人の気持ち』は別々だ」と頭ではわかっていても、ついごちゃ混ぜになってしまう瞬間に、心当たりがある方も多いのではないでしょうか。

たとえば今回のマンガでは、サキが圭一のそっけない様子を見て、その原因が自分にあるのではと感じ、「機嫌をとらなくては……!」というプレッシャーから気疲れしてしまう姿が描かれていました。

ここでは、サキと圭一のあいだのバウンダリーがゆるくなりすぎており、本来は圭一自身が抱えるべき「圭一の荷物(=感情)」を、サキが無理に背負おうとしてしまっていたことがわかります。

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「健全なバウンダリー」ってどういう状態?

今回紹介したエピソードでは、バウンダリーがゆるくなりすぎてしまっている状態(Porous Boundaries)のほかに、厳重すぎる状態(Rigid Boundaries)についても触れられていました。

ゆるすぎるバウンダリーでは、たとえば

  • 個人情報を必要以上に共有する
  • 他人の問題に過度に干渉する。
  • 拒絶されることを恐れて、他人の要求に「ノー」と言えない。

といった傾向が見られます。いっぽう、厳重すぎると、

  • 自分についてめったに明かさない
  • 親密な関係性を避け、誰にも助けを求めない
  • 拒絶される可能性を低くするために人と一定の距離を置く

といった状態になりがちです。

前述の通り、適切なバウンダリーのあり方は場所や関係性、文化などによって異なるため、「どこに行っても完璧に通用するバウンダリー」があるわけではありません。

ただし、バウンダリーを健全な状態(Healthy Boundaries)に保てているときには、次のような特徴があるとされています。

  • 自分の意見や価値観を尊重し、他の人に合わせようと妥協したりしない。
  • 適切な程度に自己開示できる
  • 自分の欲求やニーズを理解し、それを人に伝えられる
  • 誰かから拒絶されてもそれを受け入れられる

健全なバウンダリーとは、「常に距離を置くこと」でも「すべてを開示すること」でもなく、自分と他者のあいだに、状況に応じたちょうどよい線を保てている状態だと言えるかもしれません。

親密な間柄だからこそ気をつけたいバウンダリー

そもそも今回のマンガでサキが圭一の機嫌をうかがい、ストレスを抱えていたとき、

  • 圭一が本当に不機嫌だったのか、
  • 仮にそうだとして、その理由が何だったのか

どちらも明らかにはなっていませんでした。

それでも、相手の感情を自分の責任のように感じてしまい、バウンダリーのゆるさが生じてしまっていたと言えます。「一緒に暮らしている恋人」という距離の近さもまた、バウンダリーをゆるくさせすぎる要因でもあります。

特に恋人や家族、親しい友人とのあいだでは、相手との親密さや「関係を壊したくない」という思いが強くなりやすいぶん、「自分は自分、人は人」という境界が、いつの間にか見えにくくなってしまうことがあるのです。

だからこそ、マンガの中のサキが「相手の機嫌は相手のもの!」と何度も唱えていたように、すぐには慣れなくても、意識的に立ち止まってみることで、自分はもちろん、相手との関係もより心地よいものにしていけるのではないでしょうか。

さいごに

今回の記事では、恋人との関係のなかでバウンダリーを尊重することの重要性に気づいたというエピソードを紹介しながら、健全なバウンダリーのあり方などについて見てきました。

パレットークではこれから2週間、バウンダリーをテーマにコンテンツをお届けしていきます。

自分の心と身体を守るためにも、そして周りの人と健全で対等な関係性を築くために、一緒に学んでみませんか?

参考
https://therapy-central.com/2025/09/19/personal-boundaries-examples-tips
https://uhs.berkeley.edu/sites/default/files/relationships_personal_boundaries.pdf