従姉妹と私とセルフパートナーの話。二人の女性がくっついているイラスト。茶髪でロングヘアの女性がこっちに向かってピースをしている。黒髪ショートヘアの女性がこっちを見て微笑んでいる。
「ひとりで生きるのって、やっぱり寂しいの?」「結婚しない人生って、変なのかな?」そんな価値観がいまも根強く残るなか、主人公Mは親戚の集まりで「結婚はまだ?」というプレッシャーを受けてしまいます。今の自分に幸せを感じつつも将来に不安を抱えていたMは、Tとの会話で「セルフパートナー」という言葉に出会います。「当たり前とされる幸せだけじゃない。生き方には、もっといろいろな道がある」そんなことを改めて考えさせられるエピソードです。
私にはTちゃんという6歳上のいとこがいる。 Tちゃん、34歳、かっこいい黒髪のショートヘア。私、M、28歳、カールした茶髪の長髪。10代の頃からTちゃんの「私は私らしく」という姿を見て憧れていた。母「Tちゃん、大学卒業してフリーランスになったらしいよ」10代の頃のM「カッコイイ…!」これはつい最近、正月に親戚たちと集まって久しぶりにTちゃんと再会したときの事…。
親戚のおば「そういえば△△の○○ちゃん結婚したらしいね」親戚のおじ「もうそんな歳か〜。TとMもそろそろいい人いないのか?」TとMの方に振り返るおじ。M、それを受けてむっとした顔。T「いや〜私、ひとりが楽しいんですよね〜、人と暮らすの向いてないというか」M「わ、私も…!」親戚のおばあちゃん「でもひとりだと、歳とってからが寂しいものだからねぇ」M、それを言われてぐっ…となる。
親戚の叔母「でもほら、Tちゃんは今フリーランスで活躍してるし、才能もあるし、わが道を行くって感じだったから…ねぇ?」親戚のおじ「たしかにそうだなぁ。Mはそんなことする度胸はないもんなぁ〜?」T、それを受けて「げっ…Mの方に行った…」という顔。M、「ハハハ…」と苦笑。親戚のおばB「Mちゃん、ちょっと買い出し行ってくれない?」M「は〜い」T「あ、じゃあ私も行きますよ」夜のスーパーマーケットの背景、レジ袋を持ったMとT。T「大丈夫だった?さっきの」M「え?ああ…」
M「こういうのがあるからこっち帰ってくるの嫌なんだよな〜」T「うんわかる、私もそう。やっぱまだ、「ひとり」は寂しい・不幸とか、「自分勝手・変な人」とか、ネガティブなイメージ強いんだろうね」M「でもさ〜「結婚して子どもを産む」のが「普通の幸せな人生」で、そこからはずれても大丈夫なのはTちゃんみたいな「特別な人」だけって… 結婚を選んだ人にも、選ばなかった人にも失礼な話じゃん?」T「ああ〜それね〜ほんとにそう…」
T「みんな、それぞれの幸せを追い求めればいいだけなのにね」M「うん…」とちょっと悩んでいる顔。T、それを察して「ねぇMちゃん、私はひとりで生きてて幸せだし、孤独とも思わないし、これからも結婚するつもりはない。でも、それは私が「特別だから」ってわけじゃないよ」M「 あ!ごめん!それは知ってる!」
M「でもやっぱ、「ひとりで幸せ」って感じてて、大丈夫かな?って不安にはなるよ。 「結婚したから将来の不安はなくなる」ってわけじゃないことはわかってるけど…」……T「Mちゃんさ、「セルフパートナー(self-partnered)」って知ってる?」M「なにそれ?」T「その人自身がシングルの状態で充実してて、満足してて、幸せだな〜って感じてるってこと。 「充実感を得るためにパートナーがほしいとは思っていない人」のことを言うんだって」
M「それってつまり…!」T「うん、私たちってこと!シングルで幸せに生きるロールモデルってまだまだ少ないけど、なれたらいいよね」 M、それを聞いて嬉しそうに 「Tちゃんがいるから、私も私らしくでいいんだって、昔から思えてたよ!」T「えっそうなの?ありがと~」田舎の夜道を二人くっついて歩くMとT。おわり。

【マンガで解説】「独身=幸せになれるわけない」って本当?アマトノーマティビティ、セルフパートナー、QPR

従姉妹と私とセルフパートナーの話

「理想のパートナーと出会うことこそが幸せ」という価値観がまだまだ「あたりまえ」とみなされることも多い日本社会。そんななか、だれともお付き合いをしないでいると、

「一人が楽しいって言ってる人は、強がってるだけ」
「若いうちはいいけど、どうせ寂しくなるよ」
「相手がいないから、そう言ってるんでしょ?」

という言葉をかけられてしまうことも少なくありません。

たしかに、日本では法律婚をすると税制や社会保障の面でメリットがあるなど、制度上「結婚したほうが得」とされる場面があります。こうした制度上のメリットは、まちがいなく大きな意味を持つものです。

でも、どんなライフスタイルを幸せと感じるかは、本来ひとりひとり違うはずですよね。

今回の記事では、「セルフパートナー」という言葉をテーマにした体験談マンガを入り口に、「独身=不幸」という見方の背景と、恋愛や性愛に限らない親密さのあり方について考えてみたいと思います。

「独身=幸せになれるわけない」って本当?

「恋愛して、結婚して、家族をつくるのが自然なこと」

そんなイメージは、ドラマや映画、広告のなかで、繰り返し描かれてきました。気づかないうちにそれは「あたりまえの人生設計」として内面化され、疑う余地のない前提のように扱われることも少なくありません。

このように、結婚関係や恋愛関係を過度に「尊いもの」とみなし、恋愛とその成就をすべての人に共通する目標だとする考え方を、哲学者のエリザベス・ブレイクは「アマトノーマティビティ(恋愛伴侶規範)」と名付けました。

ブレイクによると、アマトノーマティビティ(恋愛伴侶規範)の背景には、次のような想定があるといいます。

  • 単一で排他的な恋愛関係が「普通」で、誰もが目指すべき目標である
  • そうした関係こそが最も望ましく、他の関係よりも優先されるべきである

この前提に立つと、友人関係やその他のケアを基盤としたつながりは、相対的に価値を低く見積もられることになってしまいます。恋愛や結婚が人生の中心に置かれることで、友情や独身でいることは「周縁的なもの」として扱われてしまうのです。

その結果、たとえば

  • 恋愛経験のない人は、まだ「途中段階」にいる
  • 友情よりも恋愛関係が優先されるべき
  • 一人でいることは「満たされていない」状態

といった見方が生まれやすくなります。

でも実際のところ、「人生の幸せ」は本当に、恋愛や性愛、結婚を通じてのみ得られるものなのでしょうか?

セルフパートナーってなに?

セルフパートナー(self-partnered)とは、シングルでいることに満足していて、幸せだと感じている状態を表す言葉です。

俳優のエマ・ワトソンが2019年、雑誌『Vogue』に掲載されたインタビューでこの言葉を用いたことをきっかけに、世界的に知られるようになりました。

記事の公開後には、

「言葉遊びで現実から目をそらしているだけ」
「自己中心的(self-centered)だから相手が見つからないのでは」

といった否定的な意見も見られました。

こうした反応の背景には、「幸せな独身なんているはずがない」という思い込みがあるのかもしれません。

けれど、「セルフパートナー」という言葉が示したのは、まさにその思い込みを問い直す視点だったのではないでしょうか。

「誰かと一対一のお付き合いや結婚をしなくても、幸せに生きていける。」

そう著名人が公に語ったことで、同じ感覚を抱いていた人たちから共感の声が集まり、ポジティブな反応が広がりました。

恋愛や性愛にかかわらない親密関係の存在

さらにいえば、恋愛や性愛にかかわらない関係のなかにも、深い絆や支え合いは確かに存在しています。そのひとつが、QPR(クィアプラトニック・リレーションシップ)です。

QPRは、2010年代にアセクシュアル/アロマンティックのコミュニティの中で生まれた言葉で、「恋愛関係や友情といった既存の枠組みに当てはまらない、深い絆を伴う関係性」を指します。

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恋愛的・性的な惹かれを経験しない人であっても、「特別で親密な関係を築きたい」と思うことはあります。

たとえば、

  • 恋愛的な関係を持たずに人生のパートナーとして共に暮らす
  • 血縁関係はないけれど、お互いを「家族」として認識し、法的手続き(養子縁組など)を利用して関係を築く
  • 恋愛関係は持たず、一緒に子どもを育てる

など、その形はさまざまです。

「プラトニック」という言葉には本来「性的関係を伴わない」という意味合いがありますが、QPRのあり方は一様ではなく、当事者同士が心地よい形で関係を築いていきます。

大切なのは、「恋愛や性愛があるかどうか」や「婚姻関係にあるかどうか」ではなく、その関係が当事者にとってどんな意味を持つかという点。

セルフパートナーという言葉も、QPRという言葉も、「恋愛や婚姻こそが唯一の正解」という前提をほどき、これまで価値を見出されてこなかった親密さやより心地よいと思える生き方を言葉にしようとする試みだといえるでしょう。

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さいごに

今回の記事では、「セルフパートナー」という言葉をきっかけに、「独身でいるなんて不幸に違いない」という視線の背景と、恋愛や性愛に限らない親密な関係のあり方について考えてきました。

「恋愛して結婚=幸せ」というイメージは、繰り返し描かれることで「あたりまえ」のように共有されていきます。でも少し周りを見渡せば、多様な関係を生きている人や、新しいあり方を模索している人がいることに気づきます。

心地よいと感じる関係のかたちは、人それぞれ。
だから、すべての人に当てはまる「幸せな生き方」があるわけではありません。

あなたにとって、心地よい関係のかたちはどんなものですか?

参考:https://elizabethbrake.com/amatonormativity/

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