エーゴセクシュアルってなに?アセクシュアルとなにが違うの?

近年、少しずつ知名度が高まってきたと感じるアセクシュアル。ドラマや映画の登場人物としても描かれることが増えてきました。しかし、アセクシュアルと言っても、その性のあり方は非常に多様であることはまだまだ十分に知られていないかもしれません。

今回は、アセクシュアルのスペクトラムに含まれる性のあり方である「エーゴセクシュアル(アエゴセクシュアル)」について、その意味と言葉の成り立ちについて解説します。

「性的な魅かれを経験しない/しづらい」性のあり方のなかに広がる多様な性のあり方や、ニュアンスを理解するきっかけにしていただけると幸いです。

エーゴセクシュアルの意味って?

エーゴセクシュアル(アエゴセクシュアル)とは、性的なコンテンツ(ポルノ)を楽しんだり、それによって興奮したり、自慰行為をしたり、性的な空想を抱いたりすることはあっても、誰かとセックスをしたいという欲求や、相手との性的な関係を持ちたいという願望がない性的指向のこと。

打ち消しや否定を意味する接頭辞「a-」と、ラテン語の「ego(自己・私自身)」を組み合わせ、自分自身(self)を伴わない性との関わりを意味しています。

  • A- (接頭辞): 「〜がない」「非」「否定」
  • ego (エゴ): 「自己」「私自身」
  • sexual (形容詞): 「性的な」「性に関する」

アセクシュアルの人のなかには、もちろん性的なコンテンツや自慰行為などに関心を持たない人、嫌悪感を持つ人もいます。しかし反対に、こうした事柄を楽しむからといって「アセクシュアルではない」というわけではなく、スペクトラムの一部に確実に存在する性のあり方とされています。

エーゴセクシュアルとアセクシュアルとの違いは?

エーゴセクシュアルは、広義のアセクシュアルに含まれる性のあり方とされています。

アセクシュアルは誰に対しても性的惹かれを感じない、もしくは、ごく限られた状況でしか持たない人を指す言葉ですが、そのなかでも

「性的なコンテンツを楽しむことはある」
「エッチな空想をすることがある」
という人たちが、自分自身を指すラベルとしてコミュニティのなかから誕生しました。

アセクシュアルのスペクトラムには非常に多様な性のあり方が含まれますが、エーゴセクシュアルもまた、そのうちの1つのマイクロレーベル(細かいラベル)とされています。

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アセクシュアルスペクトラムのなかのマイクロレーベルには、たとえば以下のようなものが存在します。

  • デミセクシュアル: 感情的な絆が形成された後にのみ、性的惹かれや欲求を経験する人(特定の基準が満たされるまでセックスを控えるという選択とは異なります)。
  • グレーセクシュアル:アセクシュアルとセクシュアル(アセクシュアルではない人)の中間に位置する人。たとえば、性的惹かれを経験するのはごく稀である人、また特定の状況下でのみ性的惹かれを経験する人、人間関係においての重要度が極めて低い人などが当てはまります。
  • フレイセクシュアル:初対面や知り合ったばかりの人に対しては、強い性的惹かれを感じることがあるものの、その相手と親密になり、感情的な絆や関係性が深まるにつれて性的惹かれが薄れたり、完全に消滅したりする性のあり方を指します

こうした、様々なアセクシュアルのスペクトラム上のあり方を総称して、Ace(エース)と表現することもあります。

エーゴセクシュアルとオートコリオセクシュアルの違いって?

エーゴセクシュアルと似た意味の性のあり方として「オートコリオセクシュアル(autochorissexual)」というのを目にしたことがある方もいるかもしれません。

これは心理学者アンソニー・ボガートが提唱した専門用語で、単語の成り立ちとしても、【Auto-(自己)+ choris(なしに)+ sexual(性的)】と、エーゴセクシュアルの成り立ちと非常に近しいものです。

しかし、実はこのオートコリオセクシュアルはネガティブな病理的文脈で用いられてきた文脈があります。

オートコリオセクシュアルに限らず、アセクシュアルのスペクトラムに含まれる人々は、性的な惹かれを経験しない・しづらいという点で、「健康ではない」というレッテルを貼られてきました。この、性的な惹かれと健康さを結びつける考え方を「セクシュアルノーマティビティ」と呼びます。

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オートコリオセクシュアルもまた、学術的・医学的な文脈で「健康的ではない」という意味合いをもって使われてきました。それに対して、エーゴセクシュアルは、アセクシュアル・スペクトラムの当事者によって、「自分自身で選び取ったラベル」として作られた経緯があるのです。

まとめ

性のあり方は人のプライベートに関わること。そこには曖昧さ・流動性・不明瞭さが存在します。そしてアセクシュアルのなかでも、性的な事柄とどのように関わるかは人によって異なります。

エーゴセクシュアルもまた、この社会に確実に存在する誰かに、居場所を確保し宣言する力を持っているラベルの1つなのです。

アセクシュアルのコミュニティは、1人ひとりの性に関わる繊細なニュアンスを表現し、肯定するさまざまな概念や言葉を生み出してきました。

パレットークでは、エーゴセクシュアルを含む、アセクシュアルの方の体験談を随時募集しています。こちらのフォームよりお寄せください。

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参考:Young, E. (2022). ACE VOICE – What it means to be asexual, aromantic, demi or grey-ace. Jessica Kingsley Publishers.