パレットークおすすめ図書vol. 3 – 私たちが誰かを傷つけてしまう前に学ぶためのおすすめ2選

フェミニズムやLGBTQ+について知るほどに「あのときの自分の言動は誰かを傷つけてしまったかもしれない」と、過去の自分を振り返る機会も増えてきますよね。

「もしかして今後も同じように誰かを傷つけてしまうかもしれない」というのは多くのフェミニストやアライの方が抱えている不安かもしれません。

もちろんどんなに学んでも、絶対に誰も傷つけない自分にはなれないかもしれませんが、それでも今日はそんな不安を持つ方におすすめの本を2冊ご紹介したいと思います。

子育て世代以外にもオススメ!

『これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン』

私たちの生きる社会には「女の子なのだから(おしとやかに・偉ぶらないで・清楚にetc…)」という”らしさ”の押し付けがイヤというほどたくさんありますが、その裏側には「男の子なのだから(強く・たくましく・勇ましくetc…)」という押しつけも存在しています

“有害な男らしさ”という言葉を耳にした方もいらっしゃるでしょうか。”男らしさ”によって優劣が決められてしまうホモソーシャルな環境では、ときに乱暴な行動が推奨されてしまったりもします。

まず最初にご紹介するのは、そんな”男らしさ”に着目した太田啓子さんによる『これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン』です。太田さんは実際に2人の男の子を育てていますが、その中で社会の様々なところから発せられる”男らしさ”や性差別的な価値観のメッセージを感じるそうです。

性的同意や、自分とは違う性を持つ人を同じように尊重する気持ちの大切さが認識されるようになってきた今日。「”有害な男らしさ”を身に着けずに育つ男の子が増えてほしい。」そう考えている子育て中の方は多いのではないかと思います。

この本では、「カンチョー」や「スカートめくり」などの男の子を育てている方が直面する具体的な問題から、太田さんが心がけた声がけのエピソードなど、子育て中の方にとって参考になる内容がたくさん書かれています。

また、”有害な男らしさ”の源泉や、セクハラ・DVなどの問題について、フェミニストの弁護士として活躍している太田さんだからこそ語れる内容もあり、子育て中ではない人にとっても、とても読みごたえのある本でした。

今まさに大人の「男の子」として”男らしさ”の行き詰まり感を覚えている方にとっても、”らしさ”を再考するヒントがたくさんあると思います。

子育て中か、そうでないかに関わらずぜひ多くの方に読んでほしい1冊です!

太田啓子著『これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン』大月書店より発売。

基礎から応用まで丁寧に学べる –

『LGBTとハラスメント』

「お前、”ホモ”みたいだよな!(笑)」-「ちげーよ、やめろよ〜(笑)」 「○○さんって男だったらしいよ」-「そうだったんだ、ちょっと怖いね」

このような発言をSOGIハラと言います。SOGIハラは、直接的にLGBTQ+当事者に向けられる発言だけではなく、性的指向や性自認に関する侮蔑的な言葉すべてを指す言葉。

近年、LGBT研修やハラスメント研修などを実施する企業も増えてきましたが、まだまだ「いないと思っているから」「飲み会の軽い冗談だから」と、認識の不十分なケースが多いように感じます。またプライベートな情報を勝手に暴露するアウティングは、誰かを深く傷つける行為ですが、まだまだその重大さも十分に知られていません。

一方、「このようなSOGIハラ発言やアウティングはしないけど、何に気をつければLGBTQ+当事者を傷つけずにすむだろう?」と、疑問に思っている方も多いように感じます。また周りでSOGIハラが起きているときに、どう対応すればいいのかわからず、モヤモヤしている人もいらっしゃるかもしれません。

そこでご紹介したいのが、神谷悠一さんと松岡宗嗣さんによる『LGBTとハラスメント』です。

この本では、 ・カミングアウトされたら「襲われる」と思う人たち ・「うちの職場にはLGBTはいない」と思いこむ人たち ・「私はLGBTの友人がいるから理解がある」と思い込む人たち などなど、とにかく具体的な”勘違い”やアルアルをケースごとに解説しています。

また、「そもそもLGBTQ+やSOGIとは?」という基本的な知識から、さらに企業におけるLGBTQ+関連施策の詳しい説明や事例も知ることができます。

企業の人事やマネージャーなど組織づくりを担っている方には特に必読の1冊となっています!

神谷悠一・松岡宗嗣共著『LGBTとハラスメント』集英社より発売。

誰かを傷つけてしまう前に知っておきたいこと

「誰かに傷つけられた」という経験も忘れることができないものですが、同時に「誰かを傷つけてしまった」という経験も、ずっと重く私たちにのしかかること。

誰かを傷つけないように学ぶことは、その誰かだけにとどまらず、自分自身の心や身体を守ることにもつながるはずです。

今回ご紹介した2冊の本は、LGBTQ+当事者か、子育て中か、に関わらず多くの方の勉強になる内容がたくさんつまっています。ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思います。