働きやすい職場を実現する制度とは?

ダイバーシティ推進の具体事例と重要性を解説

近年、多くの企業で「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」という言葉が掲げられるようになりました。単に多様な人材を集めるだけでなく、その多様な人材がそれぞれの能力を最大限に発揮できるような環境を整える「インクルージョン(包摂)」が、企業の持続的な成長には不可欠です。

とくに、LGBTQ+当事者や女性にとって働きやすい環境を整えることはダイバーシティ推進を進めるうえで、避けては通れないテーマ。とはいえ、具体的にどのような制度を導入すればいいのか、悩んでいる人事担当者やダイバーシティ担当者も多いのではないでしょうか。

この記事では、なぜ制度設計が重要なのか、そしてどのような制度が必要とされているのかを解説していきます。

なぜ今、社内制度設計が重要なのか?

企業におけるダイバーシティ推進では、社内制度の整備が欠かせません。これは働く人々の人権を尊重するうえで重要であるだけでなく、経済的成果を求める企業にとっても大きなメリットをもたらします。では、ダイバーシティの視点から社内制度を整えることは、具体的にどのような利点を企業にもたらすのでしょうか

1. 優秀な人材の確保と定着

多様なバックグラウンドを持つ人が安心して働ける制度を整えることは、企業にとって採用競争力を高める大きな要素となります。

まず、米国の調査では「職場の多様性は企業選びの重要な評価基準になる」と答える求職者が多数を占めるというデータが発表されています。日本でも毎日新聞の調査において、83%の企業が「DEI(ダイバーシティ/エクイティ/インクルージョン)は優秀な人材の獲得に役立つ」と回答しており、求職者が多様性を重視する傾向は国内外で共通していることがわかります。

さらに、組織内で「自分らしく働ける」と感じられることは、従業員のエンゲージメント向上や早期離職の抑制につながります。その結果として、採用コストや人材不足による空席期間の削減、さらにはスキルの蓄積による生産性向上といった経済的な効果も期待できます。

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2. イノベーションの創出

多様な視点や価値観が交わる組織では、これまで見すごされてきた課題に気付き、新たなアイデアや解決策が生まれやすくなります。

「ダイバーシティ推進が企業のイノベーションにつながる」ことは、数多くの調査で示されています。たとえばWorkdayによる調査では、「DEI(多様性・公平性・包摂性)への取り組みによるビジネスへの影響を測定する割合」が2022年の27%から2023年には48%へと大幅に増加しており、DEI施策がイノベーションや事業価値向上などの成果につながる可能性を組織が認識していることがわかります。

多様なバックグラウンドを持つメンバーが意見を対等に発信できる環境、すなわち「包摂(インクルージョン)」が制度設計に組み込まれることで、意思決定の質やスピードが向上し、結果として実行力あるイノベーションが促されるのです。

3. 企業イメージの向上とブランド価値の向上

企業がダイバーシティ推進に積極的であることは、社会や市場からの評価向上に直結します。

近年、ダイバーシティやサステナビリティへの注目度が高まってきていますが、とくにこの傾向は、若年層においてより顕著になっています。デロイトトーマツによる「2024 年度 国内Z世代意識・購買行動調査」では、Z世代(15〜29歳)は他世代に比べてサステナビリティへの関心が高い傾向にあり、価値や背景を重視する消費傾向がうかがえます。

さらに、多様性への配慮は「社会的責任をはたす企業」としてメディアやステークホルダーからも高い評価を得やすくなり、採用市場でもブランドアピール力となります。結果として、ロイヤル顧客やリピーターの形成、取引先からの信頼獲得につながり、長期的なブランドの資産化を後押しします。

誰もが働きやすい職場に必要な制度の種類

一方で、単純に「制度さえ導入すればよい」というわけでもないのがダイバーシティ推進の難しいポイントでもあります。

多様性に配慮した制度は、単に導入するだけではなく、従業員に実感され、使われることが重要なのです。エン・ジャパンが2020年に実施したアンケートで、87%が「ダイバーシティの考え方は企業にとって必要」と回答する一方で、「自社が取り組んでいると感じる」はわずか18%にとどまるとされています。

つまり、多様性に対する期待は高いにもかかわらず、実際に制度が「見える形」で運用されていない企業が多い状況です。

それでは、このギャップを埋めるためにはどのような取り組みが必要なのでしょうか?今回はとくに、LGBTQ+と女性活躍推進に焦点を当てた制度の例を挙げます。

1. LGBTQ+に関する制度

  • パートナーシップ制度の導入: 同性パートナーを持つ従業員を、法律上の配偶者と同様に福利厚生(慶弔休暇、家族手当、住宅手当など)の対象とする制度です。これにより、同性パートナーを持つ従業員も安心して働くことができます。
  • 性別適合手術・治療に関する配慮: 性別移行を考えているトランスジェンダー従業員に対して、性別適合手術やホルモン治療のための休暇制度や、治療期間中の柔軟な働き方(リモートワーク、時短勤務など)を認める制度です。
  • 通称名の使用: 履歴書や名刺、社内システムなどで、戸籍名とは異なる通称名(日常的に使用している性自認に合った名前)の使用を認める制度です。
  • 性自認に基づくトイレ・更衣室の利用: 従業員の性自認に基づいたトイレや更衣室の利用を認める、あるいは性別に関係なく利用できる「だれでもトイレ」を設置する取り組みです。
  • ハラスメント防止規定の明文化: SOGIハラ(性的指向・性自認に関するハラスメント)やアウティング(本人の同意なく性的指向や性自認を他者に暴露すること)を明確に禁止し、就業規則に明記することで、差別のない職場環境につなげていくことができます。
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2. 女性活躍に関する制度

  • 育児・介護休業制度の充実: 法定以上の育児・介護休業期間の設定、取得しやすい雰囲気作り、休業からのスムーズな復職支援(キャリア面談、情報提供など)が重要です。また、女性従業員に限らず、男性従業員の育児休業取得促進も求められています。
  • フレックスタイム制度・リモートワークの推進: 時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を認めることで、育児や介護、通院など、個人の事情に合わせた働き方が可能になります。
  • 短時間勤務制度の拡充: 法定以上の短時間勤務の適用期間を設けることで、子育て期の従業員がより長く安心して働けるようになります。
  • キャリア継続支援: 産休・育休からの復職者向け研修、キャリアカウンセリング、管理職への積極的な登用、ロールモデルの提示など、女性がキャリアを中断することなく、長期的に活躍できるような支援策が必要です。
  • ハラスメント防止対策の徹底: パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの防止策を強化し、相談窓口の設置と周知、迅速な対応を徹底することで、安心して働ける環境につなげることができます。
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3. その他の共通制度・取り組み

  • 相談窓口の設置: 社内外に、ハラスメントや制度利用に関する相談ができる窓口を設置し、匿名での相談も可能にするなど、従業員が安心して相談できる環境を整えましょう。
  • アンコンシャス・バイアス研修: 無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)が、採用、評価、育成など様々な場面で意思決定に影響を与えることを理解し、その影響を軽減するための研修です。
  • アライ(Ally)育成: LGBTQ+を理解し、支援する人々(アライ)を増やすための研修やコミュニティ作りを推奨します。

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すべての従業員が安心して働ける環境を作るためには、多角的な取り組みが必要となります。上であげた例は、あくまで代表的な取り組みとなりますが、実際に1人ひとりの従業員がどのような取り組みを必要としているかは異なります。

だからこそ、従業員がどのような取り組みを必要としているのか、現時点での課題はなになのかを適切に把握していくことが大切なのです。

ダイバーシティ推進の取り組みに困ったら…

社内制度の設計は、当事者の声や社会の動きを正確に理解したうえで行う必要があります。しかし、自社だけでこれらすべてを網羅し、最適な制度を設計することは簡単なことではありません。

「現状に合った制度・取り組みは?」
「既存の制度を見直したいけど、何から手をつければいい?」
「従業員からの理解を得るには?」
など、様々な疑問や課題に直面することもあるのではないでしょうか。

パレットークは、LGBTQ+やジェンダーに関する情報発信の経験から、企業におけるダイバーシティ推進のお手伝いをしています。

  • 現状分析と課題抽出: 貴社の既存制度や社内文化を分析し、ダイバーシティ推進における具体的な課題を明確化
  • 最適な制度設計の提案: 企業規模や業種、従業員のニーズに合わせた、実践的かつ効果的な制度の設計をサポート
  • 制度導入後の浸透支援: 新しい制度が従業員に正しく理解され、活用されるための周知方法や啓発活動のサポート
  • 従業員向け説明会・研修の実施: 親しみやすいマンガを使用した研修・講演・ワークショップの実施

誰もが働きやすい職場は、企業価値を高め、持続的な成長を実現するための重要な基盤です。制度設計は、その第一歩となる非常に重要なプロセスです。

誰もが自分らしく働ける職場を作るために ― ぜひパレットークへお気軽にご相談ください。
https://tiewa.co.jp

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