『あのときの自分/あの子』に渡したい本

The Future Is Queer "ストレート"じゃない未来をあなたと想像するためのブックフェア選書紹介/前編

2025年初夏に下北沢の本屋B&Bで開催された「 “ストレート”じゃない未来をあなたと想像するためのブックフェア」の選書を前/後編に分けてご紹介します。

今回の記事でご紹介するテーマは、「『あのときの自分/あの子』に渡したい本」。

パレットーク編集部メンバーに加え、8名の方々に選書いただきました。

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『自分を愛するということ(あるいは幸福について)

佐々木ののか 著/2022年/亜紀書房
本体1500円+税/四六判/136ページ

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📚️ 選書コメント
自分の性のあり方もはっきりと分からず、誰に話すこともできなかったあの頃の私は、心から誰かと繋がるということができていたのだろうか。当時の、そして今もなお感じ続けるそんな孤独をそっと抱きしめながらも、わたしだけの幸せを探す長い旅へと歩みを進めるきっかけとなる一冊です。

この本を選んだ人:中里虎鉄(なかざと・こてつ)
1996年、東京都生まれ。編集者・フォトグラファー・ライターと肩書きに捉われず多岐にわたり活動している。雑誌『IWAKAN』を創刊し、独立後あらゆるメディアのコンテンツ制作に携わりながら、性的マイノリティ関連のコンテンツ監修なども行う。また、俳優としての活動もスタートし、出演作品が公開予定中。

『となりのとらんす少女ちゃん』

とら少 著/2025年/在野社
本体1650円+税/A5版/192ページ

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📚️ 選書コメント
わかってもらおうとか思えないけれど、どこかでわかってほしいと願う、トランスジェンダーの心情がえぐり出されていて、びっくりしました。

この本を選んだ人:周司あきら(しゅうじ・あきら)
作家、主夫。昔の自分が読みたかった言葉や、昔の自分には想像できなかった文章を書いて生活してます。近刊『トランスジェンダー男性のきみへ――性別移行した19人からの手紙』に解説を書きました。

『マリはすてきじゃない魔女』

柚木麻子 著/坂口友佳子 絵/2023年/エトセトラブックス
本体1200円+税/四六判/168ページ

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📚️ 選書コメント
魔法の物語が大好きな子どもだった私(たち)へ。女性同士の大人のカップルも、トランスの女の子も、ノンバイナリーの子も出てくるこの本は、クィアな私たちのための魔法に満ちている。

この本を選んだ人:水上文(みずかみ・あや)
92年生。クィアでフェミニストのライター。著書に『クィアのカナダ旅行記』(柏書房)、企画編著に『われらはすでに共にある 反トランス差別ブックレット』(現代書館)。フェミニズム雑誌『エトセトラ VOL.13』の「クィア・女性・コミュニティ」特集編集。

『ジェンダー・クィア:私として生きてきた日々』

マイア・コベイブ 著/小林美香 訳/2024年/サウザンブックス
本体3200円+税/A5変形判/256ページ

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📚️ 選書コメント
クィア、ノンバイナリーのコミック作家による自叙伝。クィア・ジャーニーはままならないことだらけだ。でも、漫画や音楽、友達との出会いに心を躍らせ、自分を深く知る過程には喜びもある。自分らしく生きようとするあなたに寄り添う一冊。

この本を選んだ人:小沼理(おぬま・おさむ)
1992年生まれ、文筆家。著書に『1日が長いと感じられる日が、時々でもあるといい』(タバブックス)、『共感と距離感の練習』(柏書房)。編著に『みんなどうやって書いてるの? 10代からの文章レッスン』(河出書房新社)。

『渾名をくれ』

新井煮干し子 著/2016年/祥伝社
本体650円+税/B6判/160ページ

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📚️ 選書コメント
何もしていなくてもあなたはあなただし、世界にはあなたとあの子しかいないわけじゃないし、二人だけの世界が途切れたとしても、その先には新しい関係性を作ることができるんだよ、と、ティーンの頃の自分に言ってあげたいです。

この本を選んだ人:高島鈴(たかしま・りん)
1995年生まれ。ライター、アナーカ・フェミニスト。著書『布団の中から蜂起せよ』(人文書院)で紀伊國屋じんぶん大賞2023の1位を獲得。ほか、『ヒップホップ・アナムネーシス』(新教出版社)、『生きるためのブックガイド』(岩波ジュニア新書)などに寄稿。

『ノット・ライク・ディス:トランスジェンダーと身体の哲学』

藤高和輝 著/2024年/以文社
本体3200円+税/四六判/296ページ

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📚️ 選書コメント
『ノット・ライク・ディス』には自分が生きるために社会と自己をとらえる理論が、ある。誰かに説明するための理論ではなく。クィアの生存に必要なのは、まさにそれだ。この本は私が求めてやまなかった異性愛規範と性別二元論の中で息をするための哲学書である。

この本を選んだ人:近藤銀河(こんどう・ぎんが)
美術史、アーティスト、ライター。著書に『フェミニスト、ゲームやってる』(晶文社、2024)、『われらはすでに共にある─反トランス差別ブックレット』(共著、現代書館、2023)、『『シン・エヴァンゲリオンを読み解く』(共著、河出書房新社、2021)など。

『ボールアンドチェイン』

南Q太 著/2024年/マガジンハウス
本体1200円+税/A5判/160ページ

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📚️ 選書コメント
鬱屈とした中学時代、多様な性を生きる登場人物の漫画に夢中になった。その中で出会った南Q太氏が今はっきりとクィアフェミニズムを掲げ、ノンバイナリーという性を描いてくれた事をあの頃の自分に伝えたい。「良いLGBTQ」じゃない主人公も最高。

この本を選んだ人:super-KIKI(すーぱー・きき)
社会に対する疑問やメッセージを、ぬいぐるみでできた横断幕やネオンサイン風のプラカード、衣服などをDIYで制作し表現する。フェミニストゲーマーの集いや、ステンシルワークショップなども展開。自身のケアと性表現の探求からinstagramでセルフィーの投稿も。バーンアウトの経験から、無理せず持続的に声をあげられる方法を模索中。

『あいつゲイだって:アウティングはなぜ問題なのか?』

松岡宗嗣 著/2021年/柏書房
本体1800円+税/四六判/232ページ

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📚️ 選書コメント
「LGBTQ+は私の話じゃない」と思っているあなたに、まず読んでほしい一冊。生きやすい社会をつくる当事者は、この社会に生きる人、全員です。

この本を選んだ人:能條桃子(のうじょう・ももこ)
1998年生まれ。2019年、若者の投票率が80%を超えるデンマークに留学し、若い世代の政治参加を促進するNO YOUTH NO JAPANを設立。Instagramで選挙や政治、社会の発信活動をはじめ、若者が声を届けその声が響く社会を目指して、アドボカシー活動、自治体・企業・シンクタンクとの協働などを展開中。

『「ふつうのLGBT」像に抗して:「なじめなさ」「なじんだつもり」から考える』

森山至貴 著/2024年/青土社
本体2000円+税/四六判/216ページ

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📚️ 選書コメント
LGBTという言葉が日常的に使われるようになった今だからこそ「なじんだつもり」になっていないだろうか。著者のヒヤリとする投げかけが、そんな自問の重要性を教えてくれます。特に「私はもう“アライ初心者”じゃないぞ」という自覚がある方に薦めたい一冊。

この本を選んだ人:パレットーク編集部 あや
1992年生まれ。株式会社TIEWAの設立者として「ジェンダー平等の実現」など社会課題をテーマとした事業を行う。広告制作からワークショップまで、クリエイティブの力で社会課題と企業課題の交差点になるようなコンサルティングを行う傍ら、ジェンダーやダイバーシティについてマンガでわかるメディア「パレットーク」編集長をつとめる。

『フェミニスト・キルジョイ』

サラ・アーメッド 著/飯田麻結 訳/2022年/青弓社
本体4500円+税/四六判/466ページ

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📚️ 選書コメント
自分らしく生きることが “不都合” とされる社会で、「わがままな子ども」とレッテルを貼られ地中深く埋められてもなお地上に向けて腕を力強く突き出す少女のように、私も何度でも蘇るゾンビ(フェミニスト)になろう。この社会のジョイを張り切ってキルしていこう。そんな勇気をもらえる一冊です。

この本を選んだ人:パレットーク編集部 まり
大学在学中よりフェミニズム活動に参加し、署名活動やパフォーマンス、レクチャーなどを行う。パレットークでは編集担当。現在はロンドン在住で、フェミニズムやロンドンでの暮らし、趣味の編み物について発信中。

『こんばんはノンバイナリーです』

ayano 企画・編集/2025年/FROM THE HELL MAGAZINE
本体1900円+税/B6判/220ページ

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📚️ 選書コメント
わざわざ「いるよ」と言わなくても存在が想定される日を求めて。SNSを通して集まった、ノンバイナリー当事者/近いアイデンティティを持つ人/ノンバイナリーと共に生きる人、総勢79名による文章とマンガのエッセイ集。ノンバイナリーの透明化や排除が増していく世の中で生きる人達の声が詰まった一冊。

この本を選んだ人:パレットーク編集部 ケイカ
パレットーク編集部メンバーで主にマンガを担当。オタクをしながらジェンダー・フェミニズムを勉強中で、ものづくりをするオタクとして自分のセクシュアリティに沿った創作活動、発信も行う。

『K-POPはなぜマイノリティを惹きつけるのか:クィアとアイドルの交差するところ』

ヨン・ヘウォン 編著/キム・セヨン、キム・ミンジョン、パク・キョンヒ 訳/2024年/河出書房新社
本体2400円+税/四六変形/296ページ

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📚️ 選書コメント
推しを通じたクィアな「遊び」はたまに失敗もあるけれど、それらを価値あるものとして記録し、規範をもてあそぶフィールドをともに拡大していこう!そんな勢いをもって、「クィア・フェミニストでありKPOPの消費者でいること」にさまざまな角度から向き合う一冊です。

この本を選んだ人:パレットーク編集部 さき
ここ数年感じていた「あったらいいな」をつめこんで本フェアを企画しました。パレットークでは主にライティングを担当。本屋B&Bのスタッフとしても働いています。