未来を一緒に想像(創造)するための本

2025年初夏に下北沢の本屋B&Bで開催された「 “ストレート”じゃない未来をあなたと想像するためのブックフェア」の選書を前/後編に分けてご紹介します。
今回の記事でご紹介するテーマは、「未来を一緒に想像(創造)するための本」。
パレットーク編集部メンバーに加え、8名の方々に選書いただきました。
『家父長制はいらない』
仕事文脈編集部 編/2024年/タバブックス
本体1400円+税/B6版変型 160ページ
📚️ 選書コメント
女性や性的マイノリティが今もなお不平等な扱いを受け、差別を被り続ける根本とは。「家父長制」について考え、解体を目指すことは、私たちだけでなく、マジョリティ男性をも救うと私は信じている。
この本を選んだ人:中里虎鉄(なかざと・こてつ)
1996年、東京都生まれ。編集者・フォトグラファー・ライターと肩書きに捉われず多岐にわたり活動している。雑誌『IWAKAN』を創刊し、独立後あらゆるメディアのコンテンツ制作に携わりながら、性的マイノリティ関連のコンテンツ監修なども行う。また、俳優としての活動もスタートし、出演作品が公開予定中。
『男性学入門:そもそも男って何だっけ?』
周司あきら 著/2025年/光文社
本体900円+税/新書 264ページ
📚️ 選書コメント
「そもそも男って何だっけ?」と、立ち止まって考えてみてもいいんです。男性の当たり前を問う学問、「男性学」の最初の一冊にオススメ。
この本を選んだ人:周司あきら(しゅうじ・あきら)
作家、主夫。昔の自分が読みたかった言葉や、昔の自分には想像できなかった文章を書いて生活してます。近刊『トランスジェンダー男性のきみへ――性別移行した19人からの手紙』に解説を書きました。
『おばあちゃんのガールフレンド』
台湾同志ホットライン協会 著/小島あつ子 訳/2024年/サウザンブックス
本体2500+税/四六判/392ページ
📚️ 選書コメント
ここには、台湾のクィア女性17名のライフヒストリーが収められている。年齢の分布は五十代、六十代、七十代。ロールモデルの少ないクィアにとって、貴重な一冊だ。未来は過去の蓄積によってこそ拓かれるのだから。
この本を選んだ人:水上文(みずかみ・あや)
92年生。クィアでフェミニストのライター。著書に『クィアのカナダ旅行記』(柏書房)、企画編著に『われらはすでに共にある 反トランス差別ブックレット』(現代書館)。フェミニズム雑誌『エトセトラ VOL.13』の「クィア・女性・コミュニティ」特集編集。
『愛と差別と友情とLGBTQ+』
北丸雄二 著/2021年/人々舎
本体2600+税/四六判/448ページ
📚️ 選書コメント
もしもあなたが未来に絶望しそうなら、過去に目を向けてみよう。長年NYからLGBTQ+に関する情報を伝えてきたジャーナリストが記録したアメリカの人々の抵抗の歴史は、きっと諦めずに闘う勇気を与えてくれる。
この本を選んだ人:小沼理(おぬま・おさむ)
1992年生まれ、文筆家。著書に『1日が長いと感じられる日が、時々でもあるといい』(タバブックス)、『共感と距離感の練習』(柏書房)。編著に『みんなどうやって書いてるの? 10代からの文章レッスン』(河出書房新社)。
『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ』
森山至貴・能町みね子 著/2023年/朝日出版社
本体1800円+税/四六判/320ページ
📚️ 選書コメント
クィアに生きることの複雑さについて、二人のクィアが唸りながら・笑いながら語り合う対談本。クィアにとっても結論の出しきれないような話を受け止めあえるフラットな関係性が、読み手にも心地よい一冊です。
この本を選んだ人:高島鈴(たかしま・りん)
1995年生まれ。ライター、アナーカ・フェミニスト。著書『布団の中から蜂起せよ』(人文書院)で紀伊國屋じんぶん大賞2023の1位を獲得。ほか、『ヒップホップ・アナムネーシス』(新教出版社)、『生きるためのブックガイド』(岩波ジュニア新書)などに寄稿。
『多聞さんのおかしなともだち』
トイ・ヨウ 著/2025年/KADOKAWA
上下巻どちらも本体780円+税/B6判
📚️ 選書コメント
『多聞さんのおかしなともだち』は90年代、00年代のカルチャーに彩られながら繊細に雄弁に語る。セクシュアルマイノリティは新しくなんてない。レズビアンの親たちに育てられた子供、同性愛を語る小説や映画、コミュニティでのアロマンティックな葛藤、語りにくさ。それは全部昔からあったのだ、と。
この本を選んだ人:近藤銀河(こんどう・ぎんが)
美術史、アーティスト、ライター。著書に『フェミニスト、ゲームやってる』(晶文社、2024)、『われらはすでに共にある─反トランス差別ブックレット』(共著、現代書館、2023)、『『シン・エヴァンゲリオンを読み解く』(共著、河出書房新社、2021)など。
『10代に届けたい5つの “授業”』
生田武志・山下耕平 編著/2024年/大月書店
本体1800円+税/四六判/264ページ
📚️ 選書コメント
暗記や記号でしかなかった授業が、ジェンダー、貧困、障害、動物、不登校をテーマに身近な例や細やかなデータで「社会」のしくみがメキメキ立体的に見えてくる!自分の痛みが社会構造の問題だと気付ける、年齢問わず読んでほしい一冊。
この本を選んだ人:super-KIKI(すーぱー・きき)
社会に対する疑問やメッセージを、ぬいぐるみでできた横断幕やネオンサイン風のプラカード、衣服などをDIYで制作し表現する。フェミニストゲーマーの集いや、ステンシルワークショップなども展開。自身のケアと性表現の探求からinstagramでセルフィーの投稿も。バーンアウトの経験から、無理せず持続的に声をあげられる方法を模索中。
『宗教右派とフェミニズム』
ポリタスTV 編/山口智美・斉藤正美 著/2023年/青弓社
本体1800円+税/A5判/224ページ
📚️ 選書コメント
なぜ日本で性的マイノリティの権利が保障されていないのか?実現を阻んできた大きな壁、政治。その裏に何があるのか、知ってほしいです。
この本を選んだ人:能條桃子(のうじょう・ももこ)
1998年生まれ。2019年、若者の投票率が80%を超えるデンマークに留学し、若い世代の政治参加を促進するNO YOUTH NO JAPANを設立。Instagramで選挙や政治、社会の発信活動をはじめ、若者が声を届けその声が響く社会を目指して、アドボカシー活動、自治体・企業・シンクタンクとの協働などを展開中。
『RESPECT:男の子が知っておきたいセックスのすべて』
インティ・シャベス・ペレス 著/みっつん 訳/2021年/現代書館
本体1800円+税/A5判/240ページ
📚️ 選書コメント
友達の息子がもうすぐ15歳になるので、彼のために買った本です。著者は「相手を尊重する気持ちが、いいセックスと愛の基本だ」という、当たり前だけど、日本社会で生きているとなかなか教えてもらえないことを相棒のように伝えてくれます。
この本を選んだ人:パレットーク編集部 あや
1992年生まれ。株式会社TIEWAの設立者として「ジェンダー平等の実現」など社会課題をテーマとした事業を行う。広告制作からワークショップまで、クリエイティブの力で社会課題と企業課題の交差点になるようなコンサルティングを行う傍ら、ジェンダーやダイバーシティについてマンガでわかるメディア「パレットーク」編集長をつとめる。
『集まる場所が必要だ:孤立を防ぎ、暮らしを守る「開かれた場」の社会学』
エリック・クリネンバーグ 著/藤原朝子 訳/2021年/英治出版
本体2400円+税/四六判/352ページ
📚️ 選書コメント
「私はこの地で暮らしているのだ/暮らしてもいいのだ」と感じられることは、ひいては誰かの命を、特により周縁化された人々の命を守ることにつながる。この本は「絆」や「助け合い」という素朴な道徳に頼るのではなく、私たちがこの土地で暮らしていくためのヒントを与えてくれます。
この本を選んだ人:パレットーク編集部 まり
大学在学中よりフェミニズム活動に参加し、署名活動やパフォーマンス、レクチャーなどを行う。パレットークでは編集担当。現在はロンドン在住で、フェミニズムやロンドンでの暮らし、趣味の編み物について発信中。
『マイノリティの繋がらない権利』
雁屋優 著/2025年/明石書店
本体2000円+税/四六判/232ページ
📚️ 選書コメント
マイノリティであれば特に耳にすることが多い「人や福祉との繋がりの大切さ」。一見すると理想的で素晴らしいその通説を、発達障害、賃金格差、能力主義など、インターセクショナリティの目線から批判し、現状を見つめ直す。
この本を選んだ人:パレットーク編集部 ケイカ
パレットーク編集部メンバーで主にマンガを担当。オタクをしながらジェンダー・フェミニズムを勉強中で、ものづくりをするオタクとして自分のセクシュアリティに沿った創作活動、発信も行う。
『隙間』
高妍 著/2025年/KADOKAWA
全4巻
📚️ 選書コメント
沖縄に留学した台北の大学生楊洋(ヤンヤン)の、個人的で政治的な青春をたどる作品。自分自身の過去やこれまで知らずにいられた歴史から目をそらさず、今よりもましな未来をあきらめないすべての人の手を取って「あなたはひとりではないよ」と語りかけてくれるようなマンガです。
この本を選んだ人:パレットーク編集部 さき
ここ数年感じていた「あったらいいな」をつめこんで本フェアを企画しました。パレットークでは主にライティングを担当。本屋B&Bのスタッフとしても働いています。