フェミニズムってなに?歴史の流れをマンガでわかりやすく説明!
最近、様々なところでフェミニズムへの関心が高まっていることを感じます。ドラマや映画でもフェミニズムのテーマが根底に流れているものが多く公開されていますし、SNSでジェンダーやフェミニズムについての発信を目にすることももはやめずらしいことではなくなってきています。
そんな流れのなかで「フェミニズムになんとなく興味あるな」と感じている人もきっとたくさんいるのではないでしょうか?
とはいえフェミニズムと言っても、様々なテーマが複雑に絡み合い、一見難しそうな単語が使われることも多いので、いざ「フェミニズムについて知ってる?」と聞かれるとイマイチちゃんと答えられない…という人もいるかもしれません。
そこで今回は、フェミニズムの大まかな歴史の流れをマンガでおさらいしてみたいと思います。
フェミニズムには本当に様々なアプローチがありますが、まずは歴史の流れを知ることで自分の関心のあるテーマを見つけるヒントにしてもらえると嬉しいです。
そもそもフェミニズムって何?
最近、様々なところで話題となるフェミニズムですが、「そもそもどんな意味?」と思う方もいるかも知れません。
ケンブリッジ辞書によると、フェミニズムの定義は以下の通り。
the belief that women should be allowed the same rights, power, and opportunities as men and be treated in the same way, or the set of activities intended to achieve this state
女性は男性と同じ権利、力、機会を認められ、同じように扱われるべきである、という思想、またそれを実現するための運動
(Cambrigde Dictionaryより)
簡単にいえば、性別による差別に反対し、男女の平等を目指す思想・運動というのが一般的なフェミニズムの定義です。
しかしフェミニズムの歴史は長く、また扱うテーマも様々であるために、一言でフェミニズムといっても様々な文脈で理解する必要があるのも事実。複雑な歴史や経緯がたくさんあるので「ハードルが高い!」と感じる人もいるかもしれません。
今回のマンガや記事ではフェミニズムの歴史を「4つの波」という側面から追っていますが、当然それ以外の道筋から覗き込むこともできます。またその歴史時代も非常に複雑で、語る人や学ぶ人の視点によっても様々な物語が浮き上がってきます。
そうした複雑さを念頭に置きながら、フェミニズムの大まかな歴史をおさらいしていきましょう。
大まかなフェミニズムの歴史
まず、先述の通りフェミニズムの歴史には大きくわけて4つの波があるとされています。第2波フェミニズムや第4波フェミニズム、などの言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。
具体的には、以下の通り。
- 第1波フェミニズム:参政権の獲得(19世紀後半〜20世紀初頭)
- 第2波フェミニズム:女性らしさからの解放・雇用や賃金の平等(1960〜70年代)
- 第3波フェミニズム:主体的な”らしさ”と多様な”女性”(1990〜2000年代初頭)
- 第4波フェミニズム:インターセクショナリティとSNS(2010年代)
このようにフェミニズムはおおまかに年代で区切られていますが、明確に「何年からどの波!」と区切られているわけではありません。また、「これ以外の時期にはフェミニズムの運動がなかった」というわけでもありません。
しかしそれぞれの波の特徴を見ていくことで、フェミニズムの歴史や複雑さ、そして今の時代のフェミニズムを理解する一助になります。
さっそく、フェミニズム運動の最初の大きな波とされている第1波フェミニズムについて見ていきましょう。
参政権がテーマ! – 第1波フェミニズムとは?
「フェミニズム運動」としてまず大きなうねりが起きたのは、18世紀末〜19世紀初頭にかけてです。当時、女性たちには投票したり政治家になったり、という参政権がありませんでした。そこで女性たちが、この参政権を求めたのが、いわゆる第1波フェミニズムです。
フェミニズム的な思想は、はるか昔から存在してきました。そして、フェミニズムの本が初めて登場したのは、1792年イギリスのメアリ・ウルフストンクラフトによる『女性の権利の擁護』だと言われています。
様々なフェミニズム思想の背景や、産業革命期の女性の労働環境改善を求める運動や奴隷制廃止運動などを経て、ついに19世紀後半、フェミニズム運動は非常に大きなうねりを起こすのです。
この第1波フェミニズムでは、イギリスのサフラジェットと呼ばれる女性グループが、過激なスタイルで参政権を求めたことが有名です。
また、参政権の他にも当時の女性たちは財産権や相続権なども認められていませんでした。「社会の中で1人の人間としての権利を手に入れよう!」というのが第1波フェミニズムだったのです。
日本でも女性参政権を求める運動はありましたが、実現するのは第二次世界大戦後の1945年になります。「案外最近のことなんだ!」と驚く人もいるかもしれません。今の私たちにとっては、性別に関係なく投票することは当たり前のように感じることですが、実はつい最近まではまったくそうではなかったのです。
サフラジェットや当時の参政権運動について詳しく知りたい人は、映画『未来を花束にして(原題:Suffragette)』がおすすめです。
次の章では、ウーマンリブとして有名な、第2波フェミニズムについてご紹介します!
「個人的なことは政治的なこと!」 – 第2波フェミニズムの特徴
1960年〜70年代(場合によっては80年代初頭とされています)、いわゆる”ウーマンリブ(Women’s Liberation、女性の解放)”と呼ばれる運動が盛り上がりました。
シモーヌ・ド・ボーボワールというフランスの思想家が『第二の性』のなかで、いわゆる”生物学的”な性(セックス)とは別に、社会的な性(ジェンダー)があると指摘しました。「女性は女性らしく生まれるのではなく、社会の中で女性らしくなるのだ」という考えは第2波フェミニズムの土台となる思想です。
当時は「女性は結婚したら家庭に入り、専業主婦として夫を支えて子どもを育てる」というライフコースが今よりもずっと強かった時代。女性がこうした「女性らしい生き方」から外れ、自分の思うような選択をすること・学ぶこと・仕事をすることはとても困難でした。
そんな社会の風潮や仕組みに対して、「女性らしさ」に違和感や怒りを抱いた女性たちが声を上げていきました。
またこの時期のフェミニストたちは「妊娠中絶の権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)の獲得」や「家庭内暴力」、「法律における男女差別」など様々なテーマが議論されます。
特に、妊娠中絶や避妊の権利、家庭内の暴力、女性らしさの押し付けなどは、それまで「個人的なこと=大した問題じゃない」とされてきました。「戦争や経済危機などの方がより大きな問題」と捉えられてきたのです。
しかし、本当はこうした女性の”個人的”な問題は社会や構造の問題と深く関わっており、決して”小さな問題”ではないとフェミニストたちは主張します。
フェミニズムにおける重要なスローガン「個人的なことは政治的なこと(Personal is Political)」もこの時期に出てきました。
これまで「個人的なことだから大した問題ではない」と片づけられがちだった日常生活のなかでの性差別に光を当て、社会全体の問題として捉えようというものです。
一方で、この時期のフェミニズム運動が「白人の中産階級女性を中心としていて、それ以外の女性を排除してきてしまった」という点が、特に有色人女性のフェミニストから批判されることになります。
第2波フェミニズムと、それに対する有色人女性からの批判についてさらに詳しく知りたい方は、『ベル・フックスの「フェミニズム理論」 – 周辺から中心へ- 』がオススメです。
女性の多様性に着目! – 第3波フェミニズムの特徴
1990年代に盛り上がった第3波フェミニズムの特徴は、「主体的ならしさの肯定」と「女性のなかの多様性の尊重」です。
第2波フェミニズムは、政治的にも大きな功績をたくさん残してきましたが、一方で「女性のあり方を画一的に捉えてしまう」という側面もありました。
たとえば、「化粧をしてハイヒールを履く女性は、男性社会の決めた”女性らしさ”に従っている」というような考え方です。しかし自分らしさの表現として、どのような格好をするかは本来誰もが自由に決められることですよね。
この時期のフェミニズムでは、そうした女性の主体性が大事にされるようになってきます。
またインターセクショナリティという考え方が重視されるようになってきたのも第3波フェミニズムの時代です。
インターセクショナリティとは、差別や抑圧は様々な要素が交差(intersect)しているという考えのこと。
同じ女性であっても、たとえば人種が違えば、日常生活の中での差別の経験は異なります。たとえば障害を持つ女性であれば。たとえばレズビアンやトランスジェンダーの女性であれば。また、経済的な格差によっても…。一言で”女性”といっても、日常で出会う差別の経験は大きく異なりますよね。
1人の人間の中にも、様々なマイノリティ性やマジョリティ性が交差的に張り巡らされています。「ならば、そうした違いや女性の中にも存在する格差や力関係についてきちんと考えることなくして、女性同士の連帯はできないのでは?」というのがインターセクショナリティ(交差性)という考え方です。
また、ビキニ・キルなどを代表に、パンク音楽のシーンからライオット・ガール・ムーブメントが盛り上がったのも、この時期でした。フェミニズムとZINE(手作りの小規模雑誌)の繋がりは、最近注目を集めることも多いですが、これもこの時期に大きく盛り上がりをみせた文化です。
『モキシー〜私たちのムーブメント〜』では、このライオット・ガールに影響をうけた現代の女子高生が学校内の性差別と戦う様子が描かれています。
SNSを使った新しい運動の形態も – 第4波フェミニズムの特徴
2010年ごろから世界中で盛り上がっているフェミニズムの潮流は、第4波フェミニズムと呼ばれています。
#MeToo運動の盛り上がりは、この記事を読んでる皆さんの記憶にも新しいのではないでしょうか。
2006年に若年黒人女性を支援する非営利団体「Just Be Inc.」を設立したアメリカの市民活動家タラナ・バークが提唱したスローガン「MeToo」は、2017年にハリウッドにおける性暴力の告発に用いられたことをきっかけに世界中に広がりました。
差別や社会問題についてハッシュタグとともにSNSに投稿して声を上げるという運動のスタイルは今や当たり前のものとなり、これまで発信するすべのなかった人たちも声を上げることが可能になってきています。
日本においても、ハッシュタグやSNSを用いた運動は、少しずつではありますが確実に社会を変えてきています。
また第4波フェミニズムの大きなできごととして忘れられないのが、2017年、人種差別や女性差別発言が問題視されていたトランプ元米国大統領の就任後に起きた、ウィメンズ・マーチ。
第4波フェミニズムでも、「女性らしさの押し付けへの批判」「性暴力への抗議」「男女の賃金格差の是正」「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」など、これまでのフェミニズムの運動を引き継いだテーマが見られます。
その上で、第3波フェミニズムの頃から注目を集めるようになったインターセクショナリティは欠かすことのできない要素となっています。LGBTQ+を始めとする性の多様性、人種差別、職業差別、障害、宗教などなど、様々な差別の交差性に着目しつつ、SNSなどの新しい発信の手段を使うというのが、第4波フェミニズムの特徴と言えると思います。
フェミニズムの歴史まとめ
- 第1波フェミニズム:参政権の獲得(19世紀後半〜20世紀初頭)
- 第2波フェミニズム:女性らしさからの解放・雇用や賃金の平等(1960〜70年代)
- 第3波フェミニズム:主体的な”らしさ”と多様な”女性”(1990〜2000年代初頭)
- 第4波フェミニズム:インターセクショナリティとSNS(2010年代)
こうやって並べてみると時代背景なども含めて、それぞれに少しずつ違いや特徴があることがわかると思います。みなさんが関心を持っているフェミニズムのイシューと、第1波〜第4波それぞれの特徴、重なる部分はありましたか?
「フェミニズムを勉強してみたいけど何から勉強すればいいのだろう?」という方は、こういう運動史を見てみて、関心のあるテーマをピックアップしてみるのもおすすめです。そこから、さらに興味深いフェミニズムのテーマを見つけてみてください。
一方で、フェミニズムについて考えれば考えるほど、それぞれの波を切りわけて考えることはできないと感じます。それぞれの波が独立しているのではなく、第1波よりさらに前から今の時代まで、フェミニズムの歴史は綿々と紡がれていているのです。
第1波フェミニズムから100年がたった現代の日本でも、まだまだ政治分野における男女の比率はアンバランスです。また第2波のときに問題となった「女性らしさの押し付け」「労働や賃金の平等」というテーマも、いまだ現代のフェミニストにとっては重要な問題であり続けていますし、また第3波のころに光が当てられ出したインターセクショナリティの大切さは第4波でもさらに強調されていますが、残念ながらまだまだ人種差別やトランスジェンダー女性に対する排除の動きも起きています。
「昔からこれだけフェミニストが闘ってきているのに、社会はまだまだよくなっていない」
これを”希望のなさ”と受け取る人もいるかもしれません。
しかし、実はその反対なのではないでしょうか。「フェミニズム」という言葉を軸に、過去のフェミニストとの繋がりを知ることは、今を生きる私たちの大きな勇気になるのです。
過去のフェミニストたちが声を上げてきたように、私たちも次の世代に少しでもいい社会を残せるよう、発信を続けていきたいと思います。