「同性カップルが結婚できないのは憲法違反」ってどういうこと?
「結婚の自由をすべての人に」
同性カップルの結婚の自由を求めて、2019年2月に全国で始まった同性婚訴訟。全国で訴訟が進んでいます。様々なところで話題になることが多くなったこの同性婚についてですが、とくに憲法の内容は複雑で難しい部分があるので、結局なんで同性婚が認められないのが憲法違反なのかよくわからないという方も多いかもしれません。
そこで、あらためて「どうして同性婚が認められない現状が憲法違反である」のか、東京弁護団共同代表の寺原真希子弁護士に伺ってきました。
ポイントとなる、憲法13条、14条、24条のそれぞれについてマンガとあわせて解説していきます。
同性婚が認められないことが憲法違反である理由
同性婚の実現を訴える原告側は「同性婚が認められていない今の法律は、憲法に違反している」と考えています。これまでの期日では、その理由として”憲法14条”と”憲法24条1項”についての主張を行ってきました。
憲法14条と憲法24条1項のそれぞれのポイントについて解説していきます。
ポイント①憲法14条(平等の原則)
こちらは、「私たち1人ひとりが、人種や性別、信じている宗教などによって差別されることは許されないよ」という平等の原則について定められた憲法です。
しかし実際には、異性カップルには認められている結婚が同性カップルには認められていない、という現状があります。「どのような性別の相手を好きになるか」という変えることのできない性的指向によって、結婚の自由が認められたり認められなかったりするわけです。
なので、「同性カップルの結婚の自由を認めていない現在の法律は憲法違反」と言えるのです。
ちなみに、2021年3月に札幌地裁で出た判決では、同性婚を認めていない現状はこの憲法14条に違反しているとの判決が出されました。
違憲判決について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ポイント②憲法24条1項(婚姻の平等)
こちらは、結婚の自由について保障した憲法です。結婚は「両性の合意にのみ基づいて成立」すると定めています。つまり、結婚する2人の当事者が「結婚したい」と言えば結婚できる、ということ。逆に言えば、当事者2人以外の人が結婚を強制することも反対することもできないということです。
この憲法が制定された当時は、今よりももっと”家制度”というものが日本社会に根強くあり、結婚というのも「家と家の結婚」とされてきました。なので多くの場合、結婚はその家で一番偉い”家長”によって決められてきたという背景があります。
そういう状況の中で、「個人の意思を尊重して、結婚の自由を保障しよう」と定められたのが憲法24条1項なのです。なので、ここでも「同性カップルの結婚の自由を認めていない現在の法律は憲法違反」と言えるのです。
ここで、「”両性”と書かれているからこれは男女のことでしょ?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これは憲法が制定された当時に同性カップルが想定されていなかった、というだけこと。時代の変遷を経て、今では同性愛を含めて性的指向は多様であるということが世界での共通認識になってきています。
ポイント③憲法24条2項
そして、さらに2020年2月に行われた東京地裁の第4回期日では原告側から、3つ目の理由が指摘されました。それが、憲法24条2項「結婚に関する事柄は、個人の尊厳に基づいてしなければいけないよ」と定める条文です。
この憲法の条文に対して、異性間にのみ結婚を認めている今の法律は、同性愛者の個人の尊厳を害しているのではないか?ということを、原告側は主張しています。
その理由を詳しく見てみましょう。
- 結婚というシステムには、相続や共同親権・在留資格など、日本で社会生活を送っていく上で、とても重要な権利が紐づけられているにも関わらず、そうした権利を同性愛者に対して認めないということは、尊厳を害している。
- 「自分では変えることのできない性的指向という、アイデンティティの根幹に関わる事柄によって結婚を認めない」ということは、個人の尊厳を害している。
- 「制度が変わらなければ永久に結婚の自由が奪われた状態が続いてしまう」という状況自体が個人の尊厳を害している。
- 「同性婚を認めない」という法律の存在自体が、「同性カップルは異性カップルよりも劣っている」という偏見を助長してい、同性愛者の尊厳を害している。
つまり国が同性婚を認められず、様々な権利が認められていない現状そのものが、同性愛者の個人の尊厳を傷付けているし、さらには「同性愛は異性愛に比べて劣っている」というメッセージを出していることになるのです。同性婚が認められていない現状では多くの当事者にとって、将来のライフコースを想像しづらい現状があります。
すべての人が尊重される法律を
以上、同性婚を認めない現状がなぜ憲法違反なのかについて解説してきました。そもそも憲法とは、私たち1人ひとりを個人として尊重するという目的のために作られたものです。現在の婚姻に関する法律は、同性カップルの個人の尊厳を尊重していると言えるでしょうか?
同性婚ができるようになったからといって、同性愛者がすべて結婚しなければいけないというわけではありません。ましてや特権を求めているのではありません。
同性婚が実現するということは、今の異性愛者と同じように、結婚すること/しないことの両方を当たり前に選択できるようになるということです。
同性婚訴訟はまだまだ続きます。法律の中でも、裁判の中でも、そして世の中でも、誰の尊厳も軽視されない。そんな社会に向けて、パレットークはこれからも「結婚の自由をすべての人に – 同性婚訴訟」をサポートしていきます!