【マンガで解説】「独身=幸せになれるわけない」って本当?アマトノーマティビティ、セルフパートナー、QPR
「理想のパートナーと出会うことこそが幸せ」という価値観がまだまだ「あたりまえ」とみなされることも多い日本社会。そんななか、だれともお付き合いをしないでいると、
「一人が楽しいって言ってる人は、強がってるだけ」
「若いうちはいいけど、どうせ寂しくなるよ」
「相手がいないから、そう言ってるんでしょ?」
という言葉をかけられてしまうことも少なくありません。
たしかに、日本では法律婚をすると税制や社会保障の面でメリットがあるなど、制度上「結婚したほうが得」とされる場面があります。こうした制度上のメリットは、まちがいなく大きな意味を持つものです。
でも、どんなライフスタイルを幸せと感じるかは、本来ひとりひとり違うはずですよね。
今回の記事では、「セルフパートナー」という言葉をテーマにした体験談マンガを入り口に、「独身=不幸」という見方の背景と、恋愛や性愛に限らない親密さのあり方について考えてみたいと思います。
「独身=幸せになれるわけない」って本当?
「恋愛して、結婚して、家族をつくるのが自然なこと」
そんなイメージは、ドラマや映画、広告のなかで、繰り返し描かれてきました。気づかないうちにそれは「あたりまえの人生設計」として内面化され、疑う余地のない前提のように扱われることも少なくありません。
このように、結婚関係や恋愛関係を過度に「尊いもの」とみなし、恋愛とその成就をすべての人に共通する目標だとする考え方を、哲学者のエリザベス・ブレイクは「アマトノーマティビティ(恋愛伴侶規範)」と名付けました。
ブレイクによると、アマトノーマティビティ(恋愛伴侶規範)の背景には、次のような想定があるといいます。
- 単一で排他的な恋愛関係が「普通」で、誰もが目指すべき目標である
- そうした関係こそが最も望ましく、他の関係よりも優先されるべきである
この前提に立つと、友人関係やその他のケアを基盤としたつながりは、相対的に価値を低く見積もられることになってしまいます。恋愛や結婚が人生の中心に置かれることで、友情や独身でいることは「周縁的なもの」として扱われてしまうのです。
その結果、たとえば
- 恋愛経験のない人は、まだ「途中段階」にいる
- 友情よりも恋愛関係が優先されるべき
- 一人でいることは「満たされていない」状態
といった見方が生まれやすくなります。
でも実際のところ、「人生の幸せ」は本当に、恋愛や性愛、結婚を通じてのみ得られるものなのでしょうか?
セルフパートナーってなに?
セルフパートナー(self-partnered)とは、シングルでいることに満足していて、幸せだと感じている状態を表す言葉です。
俳優のエマ・ワトソンが2019年、雑誌『Vogue』に掲載されたインタビューでこの言葉を用いたことをきっかけに、世界的に知られるようになりました。
記事の公開後には、
「言葉遊びで現実から目をそらしているだけ」
「自己中心的(self-centered)だから相手が見つからないのでは」
といった否定的な意見も見られました。
こうした反応の背景には、「幸せな独身なんているはずがない」という思い込みがあるのかもしれません。
けれど、「セルフパートナー」という言葉が示したのは、まさにその思い込みを問い直す視点だったのではないでしょうか。
「誰かと一対一のお付き合いや結婚をしなくても、幸せに生きていける。」
そう著名人が公に語ったことで、同じ感覚を抱いていた人たちから共感の声が集まり、ポジティブな反応が広がりました。
恋愛や性愛にかかわらない親密関係の存在
さらにいえば、恋愛や性愛にかかわらない関係のなかにも、深い絆や支え合いは確かに存在しています。そのひとつが、QPR(クィアプラトニック・リレーションシップ)です。
QPRは、2010年代にアセクシュアル/アロマンティックのコミュニティの中で生まれた言葉で、「恋愛関係や友情といった既存の枠組みに当てはまらない、深い絆を伴う関係性」を指します。
恋愛的・性的な惹かれを経験しない人であっても、「特別で親密な関係を築きたい」と思うことはあります。
たとえば、
- 恋愛的な関係を持たずに人生のパートナーとして共に暮らす
- 血縁関係はないけれど、お互いを「家族」として認識し、法的手続き(養子縁組など)を利用して関係を築く
- 恋愛関係は持たず、一緒に子どもを育てる
など、その形はさまざまです。
「プラトニック」という言葉には本来「性的関係を伴わない」という意味合いがありますが、QPRのあり方は一様ではなく、当事者同士が心地よい形で関係を築いていきます。
大切なのは、「恋愛や性愛があるかどうか」や「婚姻関係にあるかどうか」ではなく、その関係が当事者にとってどんな意味を持つかという点。
セルフパートナーという言葉も、QPRという言葉も、「恋愛や婚姻こそが唯一の正解」という前提をほどき、これまで価値を見出されてこなかった親密さやより心地よいと思える生き方を言葉にしようとする試みだといえるでしょう。
さいごに
今回の記事では、「セルフパートナー」という言葉をきっかけに、「独身でいるなんて不幸に違いない」という視線の背景と、恋愛や性愛に限らない親密な関係のあり方について考えてきました。
「恋愛して結婚=幸せ」というイメージは、繰り返し描かれることで「あたりまえ」のように共有されていきます。でも少し周りを見渡せば、多様な関係を生きている人や、新しいあり方を模索している人がいることに気づきます。
心地よいと感じる関係のかたちは、人それぞれ。
だから、すべての人に当てはまる「幸せな生き方」があるわけではありません。
あなたにとって、心地よい関係のかたちはどんなものですか?








