褒めているんだからいいんじゃない?「ジムで感じたルッキズムの話」から褒め言葉について考えてみた
見た目に関して貶すことの問題性が少しずつ広がってきたと感じられる今日。「セクハラにならないように、見た目に関するネガティブなことは言わないでおこう」と気をつけている人も多いのではないでしょうか?
しかし見た目に関してのネガティブな言及だけでなく、「褒めているつもり」の言葉であっても誰かを傷つける場合があることはまだまだ一般的ではないかもしれません。
「痩せているね」
「美人だね/イケメンだね」
もちろんこれらの言葉で嬉しい気持ちになる人もいますが、実はこれらの「見た目に関するポジティブな言及」が、状況や文脈によって相手を傷つけ不快な気持ちにさせる可能性もあるのです。
たとえば今回マンガでご紹介した、ジムでのエピソード。共感のコメントも多くいただいた一方で、
「ポジティブなことも言えないのであれば、何も言えなくなってしまう!」
「言葉を選ぶのが難しい…。」
そんなふうに感じている人も多いかもしれません。なので今回は「気をつけたい褒め言葉」と「おすすめの褒め言葉」の例をご紹介していきたいと思います。
避けたほうがよい褒め言葉のポイント
これは世の中のほとんどのことに言えることですが、大前提として褒める相手やその状況、互いの関係性によって、どのような言葉を避けるべきかは変わってきます。
同じ言葉を言われたとしても、人によって、また時と場合、関係性によってはポジティブにもネガティブにもなりえます。
そんな褒め言葉の中でも特に要注意なものをご紹介していきます。
例①顔立ち
今回のマンガでもあったように、顔立ちや容姿については、たとえ褒める方向性だったとしても無闇に言及しないようにしましょう。
「美人だね」
「イケメンだね」
もちろん褒めるつもりで発せられる言葉であっても、関係性や状況によってはセクハラと捉えられてしまったり、今回のマンガのように「この場所は安全ではない」と感じさせてしまったり…。
またよくメディアなどを通して「美人スポーツ選手」「美しすぎる政治家」など、特に女性ジェンダーの人に対して「見た目の美しさ」に焦点を当てたコメントがされることも多く目にします。こうしたコメントの問題点は「女性にとって最も重要なのは見た目の美しさである」という社会規範を表している/強化してしまう点にあります。その人物の人格や専門性ではなく、あくまで見た目が重要であるとするかのような発言にも注意をしましょう。
ルッキズムの問題が議論になると「誰かの容姿を魅力的だと思うのもダメなの?」と考える人もいるかもしれません。恋愛や性的な魅力の感じ方については人それぞれ。身近な人に対しても、芸能人などに対しても、
「キリッとした人が好み」
「優しそうな顔立ちの人が好き」
「目のぱっちりした人が魅力的だと感じる」
きっといろいろなタイプがあると思います。そしてそれ自体にはなんの問題もありません。
危険なのは、その「考え」を相手に無闇にぶつけてしまうこと。問題を混ぜこぜにすることなく、考えていけるといいですね。
例②体重・体形
現代の社会では「痩せている=よいこと」とされる風潮がまだまだ根強く存在します。そのため、「太っているね」などと発言することがネガティブな意味を含むことは多くの人が想像しやすいものだと思います。そして当然、誰かに対して「太った/太っている」と発言することは避けるべきコメントのひとつです。
一方で、「痩せている=よいこと」とされる社会で「痩せたね!」と褒める意図で発言することの問題点は少しわかりづらいかもしれません。
まず、その相手が痩せていることに対しどのように感じているか、はたから見ているだけではわからない場合も多いでしょう。体質的に太りづらく、そのことについて悩んでいる場合もあります。もしくは病気、服薬などの原因があるのかもしれません。
またその相手が、食事との関係性に困難を抱えている場合もあります。美の基準に対するプレッシャーが強い社会、摂食障害の問題はとても深刻です。むやみに体形について言及することが命に関わる場合もありますので、たとえそれが「褒めているつもり」であっても避けるようにしましょう。
そもそも、「痩せているね」と褒めること自体が「痩せている=よいこと」という風潮を強化することにも繋がります。
他にもさまざまな文脈で、褒めるつもりであったとしてもむやみに言及するべきではない事柄は多くあります。冒頭でも述べましたが、「では、どのように相手を褒めたらいいの?」と思う方も多いかもしれません。ここでご紹介する例も、もちろん人によって感じ方は様々ではありますが、コミュニケーションの際の参考にしていただけると幸いです。
相手を傷つけずに褒めるには?
顔立ちや体形、髪質、肌の色などは多くの場合生まれながらの特徴や体質に含まれます。その人自身が「変えよう」と思って変えられるものではないケースも多いので、そうした特徴についての言及は避けるべきトピックです。しかし実際にはコミュニケーションの中で相手の「見た目」に言及せずとも褒めているシーンはあるのではないでしょうか。
ここでポイントになるのが、褒める対象が「その人のチョイスかどうか」ということ。具体例をご紹介します。
①ファッションを褒める
たとえば、相手の身につけている洋服やアクセサリーを褒めること。メイクやネイルを褒めること。見た目に関することであっても、生まれ持ったものや体型などは避けながら相手を褒めることは可能です。
「その服、着心地がよさそうでいいね」
「ネイル変えたの?夏っぽくてかわいい!」
「ピアス、あなたによく似合ってる」
②相手の性格や言動を褒める
たとえば、その人と話しているとどんな気持ちになる?ハッとさせられることはある?振る舞いや言葉の選び方に、その人の魅力が現れることは多いと思います。
「そういうものの見方が素敵」
「◯◯さんの話はとても面白い」
「あなたと話していると明るい気持ちになるよ」
③スキルを褒める
シンプルに相手について尊敬すること、すごいなと思うことを伝えてみるのはどうでしょうか?これまで勉強や努力、経験を積んだことから生まれるその人の魅力にフォーカスを当てるのもオススメです。
「あなたがチームにいると、仕事がスムーズになる」
「〇〇についてすごく詳しくてすごいね!」
「歌が本当に上手だね」
まとめ
「褒める」という行動は、相手との親しさを深めたり、コミュニケーションを円滑にしたりするうえでもとても重要な役割を果たすもの。しかし一方で、褒める人自身の価値観が強く反映されるものでもあり、その価値観が相手と一致しない場合にはネガティブな結果になってしまうこともあります。
逆の立場から捉えると、相手が「褒めてる」つもりだからこそ、その言葉によって嫌な気持ちになったとしても相手にそのことを伝えづらく、また周りに相談しても「自慢している」と捉えられてしまう可能性も高いため、1人で抱えてしまっている人も多いようです。
今回ご紹介した内容は、あくま1つの基準でしかありません。同じ言葉であっても、関係性や文脈によってまったく意味合いが変わってくることもあります。
それでも、容姿や体形など生まれ持った事柄に関する言及を避けることによって、意図せず相手を傷つけてしまうことも減らせるのではないかと思います。