【マンガで解説】「私は気にしないよ」にモヤッとするのはなんで?カミングアウトされたときに気をつけたいこと
少しずつ性の多様性に対する認識が広まってきた今日。ですが実は、まだまだカミングアウトのハードルが高いと感じているLGBTQ+当事者は多くいます。
残念ながら、社会には「普通とは違う」という偏見や差別が根強く残っています。そのためカミングアウトすることによって
「職場や学校、家庭で孤立してしまうのではないか」
「いじめやハラスメントの対象になるのではないか」
という不安を抱えている方も多くいます。
また、家族や友人、同僚など親しい人に「否定される」「失望される」と感じることは、誰にとっても大きなストレスなのではないでしょうか。信頼している人に理解してもらえないかもしれないという不安や恐怖は、カミングアウトのハードルを高める要因になってしまいます。
一方で、そうしたカミングアウトを受ける側が不安を抱えているケースも多くあるようです。
「どんな応答をしたらよいのだろうか?」
「意図せず相手を傷つけてしまったらどうしよう…」
突然のことに驚いたり、自分の言葉が相手を傷つけてしまわないか心配になったりすることもあるかもしれません。そこで今回は、体験談マンガとあわせて「カミングアウトをされた場合に、その相手とよりよい関係を築くための一歩」について考えてみたいと思います。
避けるべき応答とは?
そもそもカミングアウトとはLGBTQ+の人が自分の性や恋愛のあり方など、他の人に知られていない自分のアイデンティティを打ち明けることを指します。冒頭でも述べたように、LGBTQ+に対する偏見や差別が残る社会で、カミングアウトしたことによって深く傷ついてしまう当事者も残念ながら多くいます。
一方でその意図がなかったにも関わらず、結果的にカミングアウトをした人を傷つける応答をしてしまうケースも多くあるようです。
カミングアウトやその相手との関係性は様々で、一概に正解と不正解とに整理することはできませんが、「そんなつもりはなかったのに傷つけてしまう」失敗例をご紹介します。
「私は気にしないよ」
今回の体験談でも取り上げた「私は気にしないよ」という旨の応答は、その背景にある「普通は気にするもの」という価値観で相手を傷つけてしまう可能性があります。
もちろん相手のカミングアウトを受け入れるつもりでの発言かもしれません。受け入れる気持ちを伝えたい場合には、シンプルに「言ってくれてありがとう」などの言葉に変えてみるのもよいかもしれません。
「全然そう見えない!」「普通に見えるよ!」
「全然LGBTQ+には見えないよ」
「普通に見えるから大丈夫だよ」
こうした一見ポジティブに見える応答ですが、この背景には「LGBTQ+は普通ではないから、そう見えないことはよいことである」という価値観が含まれています。
特に要注意なのが「普通」という言葉。自分にとっての普通を相手に押し付けてしまっていないか、あらためて考えるきっかけを持てるとよいかもしれません。
「イマドキでかっこいいね!」
こちらもポジティブな意味で言われることが多いかもしれませんが、LGBTQ+は流行ではありません。近年、性の多様性に関して社会的な認識が高まってきたことは事実ですが、LGBTQ+当事者は最近生まれたわけでも、「流行だからLGBTQ+になった」わけでもありません。
カミングアウトをされたときに「いいことを返さなければ」とプレッシャーを感じてしまうこともあるかもしれませんが、必要なのはただ相手の言葉を受け止めること。先にあげた例とも重なりますが、「自分自身の価値基準(よいと思う/悪いと思う)が誰にでも当てはまるわけではない」ことを踏まえられるとよいかもしれません。
信頼に応えるために、できること
今回の記事で取り上げた避けるべき応答は、あくまで一例です。カミングアウトの状況、相手の考え方やされる側との関係性も様々ですので、その状況すべてに当てはまる正解・不正解をまとめることはできません。
しかし大切なのは、カミングアウトをしてくれた相手の言葉を尊重することです。
突然のカミングアウトで、どう対応すればいいのかわからず焦ってしまうこともあるかもしれません。そんなときでも、まずは冷静に相手の話に耳を傾けましょう。
その上で
- 相手の言葉を否定することを避けて、受け止めること
- 自分自身の価値観を相手に押し付けてしまわないこと
が意識できるとよいかもしれません。
また人と人との関係性は、継続的な時間の中でつちかわれるものです。「カミングアウトをされたとき」は確かに重要な瞬間ではありますが、その相手との関係性がその瞬間だけで断絶するものではありません。だからこそ、打ち明けられたあとにこそ、相手のことを尊重する姿勢を持つことが大切です。
たとえば「何か困っていることがあったら相談してね」と伝えることや、自分自身でLGBTQ+について知識を学ぼうとすることもおすすめです。
相手を傷つけないか不安に思うのは自然なこと。だからこそ、自分の中の偏見や無意識の反応を見直し、LGBTQ+について学び考えるきっかけを増やしていけるとよいですね。