会社でのセクハラに声を上げられるか – とある社員が思うこと

「このまま黙って時が過ぎるのを待つことが、いいこととは思えない。」

2020年3月18日、私はパレットークの編集長に電話しました。
それは自身が勤める企業の創業者のハラスメントに関する最初の新聞記事が出てちょうど2週間のことです。

同社で採用や教育、ダイバーシティやSDGsの啓発を担当してきた私が、ハラスメントの報道をみて最初に感じたのは「なんじゃこら」。
そして「私が採用した子たちは、今どんな気持ちで店頭に立っているのだろう」でした。

対応に追われる広報チームと次々に書き込まれるネット情報を見ながら、「東京レインボープライドやエシカル活動など、これまで取り組んできたことが嘘になっちゃうのかな」とぼんやりと思いました。

個人のスマホには、いろんな人からメッセージが届きます。
心配の言葉にまぎれた「今は厳しい時代だからね」であったり、「アナタは上手にかわしてきたんでしょ」といった言いように、強烈な違和感をおぼえました。

そして、ふと気づいたのです。
「わたし、加害者だったんじゃなかろうか」と。

セクハラくらい、うまくかわすのが大人だから。
場を白けさせないように、下ネタくらい笑顔で対応。
カラオケのデュエットは腰に手を回されるくらい許そう。
ギャーギャー騒ぐのはみっともない。大人の女は余裕を持つこと。

社会人なりたての頃そんな先輩のアドバイスを実行しながら、自分でもセクハラ対応を「仕事ができること」のひとつの要素のように捉えてきたところがあるかもしれません。
会社の研修としてジェンダーバイアスやLGBTQ+の基礎知識について話しながらも、根本的な部分で私は間違ったままだったんじゃないかと思います。
そんな私の感覚は受け継がれて広がって、組織風土になって、ハラスメントの対応に悩んだ子が相談しようとする口を封じていたかもしれません。

声をあげられない人たちがいる。
声をあげられない人たちを私もつくった。
そう思ったら、とにかく何かしなきゃと、電話していました。

パレットークさんには、2019年からストライプインターナショナルの社内SNSで配信しているダイバーシティ/SDGsコラムのイラストを依頼していました。(2020年まで)

環境問題へのアクションのひとつであるショッピングバッグ有料化、
ジェンダーや体型に関係なくおしゃれを楽しめるオリジナル浴衣、
言語が違う方や耳が聞こえない方とのコミュニケーションについてなど、
わかりやすくスタッフに伝えるためにはどうしたらいいか、
編集長とディスカッションしながら内容を決めていく時間が
私はとても楽しみで大好きです。

今回の報道を受けて、
次々に続く過激さを競うようなニュースではなく、
手のひらを返したような記事ではなく、
遠慮して沈黙するのではなく、

戸惑っているストライプインターナショナルのスタッフたちに
「声をあげていい」「どうせ言っても無駄だ、なんて思わないで」と伝えたいと思いました。

この漫画はフィクションですが、
ハラスメントに関する世の中のいろんな要素を混ぜて制作いただきました。

無責任に冗談を言える直接嫌な思いをしていない人、
自分に見えている姿のみが真実だと思う人、
カネ目当てだと考える人、
仕事を失いたくないから我慢する人、
そもそも無関心な人、

フィクションではありますが…正直、公開することに怖さも感じています。

ただ私は、組織が健全に育つことを信じています。
働いていたことが消したい時間にならないように。

誰もが安心して過ごせるように。

二宮 朋子(ストライプインターナショナル  SDGs/ダイバーシティ担当 ※当時)

パレットーク編集部より

複数の会社や組織の実際のエピソードを参考に、フィクション漫画を制作致しました。報道に関する内容の真偽に関して言及するものではありません。

気づかないうちに、このようなことが読者の皆様の近くでも起こっているかも知れません。もし「実際に被害にあっていない社員」としてこの会社に居たら、どのようなことを考え、どのような行動をするのか。こうした企業におけるセクシュアルハラスメントが、決して自分とは無関係のものではないと、一人ひとりが感じるきっかけとなればと思います。

本記事は2020年5月に「パレットーク」noteにて公開したものです。内容や情報が当時のものであることをご了承ください。