【マンガで解説】LGBTQ+は「最近の流行」じゃない。幅広い年代に広がる多様な生き方
最近、SNSやテレビなどでLGBTQ+について耳にする機会が増えてきましたね。「なんだか最近の流行みたい」「若い世代の話でしょ」と思う方もいるかもしれません。しかし、実はLGBTQ+はけっして一部の世代や時代のトレンドではありません。
10代〜20代の若者だけでなく、30代、50代、さらには70代以上のシニア世代にもLGBTQ+の当事者はたくさんいます。また、最近になって突然”LGBTQ+が出現した”わけではなく、歴史上のそれぞれの瞬間にも多くの当事者が生きてきました。
しかし、まだまだ世間では「LGBTQ+は若い世代のこと」「最近の流行」というイメージを無意識に持っている人も多いかもしれません。
今回は、そんなイメージを持ってしまっていた読者の方の体験談マンガを通じて、LGBTQ+が「最近の話」ではないこと、そして幅広い世代の人々がどういった状況にあるのかについて見ていきたいと思います。
LGBTQ+が「最近の流行」と思われる理由
LGBTQ+が「最近の流行」として捉えられる理由はいくつかあります。メディアや社会の変化、そして人々の認識の進展が絡み合うことによってこうしたイメージを持たれることも多いですが、あらためてその理由について考えていきます。
メディアの影響
映画やドラマ、SNSなどでLGBTQ+をテーマにしたキャラクターやストーリーが増え、特に若者向けメディアで多様性を扱う作品が人気を集めています。この流れにより、LGBTQ+の話題が目立ち、「新しいもの」として受け取られることが多くなっています。
法制度の進展
同性婚の合法化や差別禁止法の制定が進む中で、LGBTQ+の存在が社会で認知されるようになりました。日本でも2015年から始まったパートナーシップ制度が全国に広がっています。また、2019年からは婚姻の平等を求める「結婚の自由をすべての人に」裁判が始まり、最近も画期的な違憲判決が出されるなどニュースで話題を目にすることも増えました。
このような法的進展が急速に進んだことで、LGBTQ+が「新しい現象」と感じられることがあるかもしれません。
カミングアウトの増加
これまでLGBTQ+当事者は偏見や差別を恐れて、自分のアイデンティティを隠さざるをえないことが多くありましたが、社会の多様な性のあり方への理解が進むことによってカミングアウトを選びやすいと感じる人も増えてきたのではないでしょうか。
また、「LGBT」のほかにも多様に存在する性のあり方が少しずつ知られるようになったり、名前がつけられたりするようになって、「自分はこれに当てはまる」と感じられる人が増えてきたことにも、カミングアウトの増加の理由があるかもしれません。
LGBTQ+の商業化とマーケティング
企業がLGBTQ+の象徴であるレインボーカラーを使った製品やキャンペーンを展開することも、「流行」というイメージに影響を与えています。プライド月間(6月)には、毎年多くのブランドがLGBTQ+コミュニティを祝う広告やイベントを実施します。
もちろん、大企業をはじめビジネス界がLGBTQ+に関する発信を積極的に行うことは、社会の空気を大きく前進させる重要な動きではありますが、一方で、これらの活動が「商業主義」として批判されることもあります。マーケティングの一環としての目立った活動が、LGBTQ+を「一時的な話題」や「トレンド」として認識させる一因となっているのです。
LGBTQ+は「新しいもの」や「流行」として捉えられてしまうことの背景には、上記の例をはじめ、よい面と悪い面をともに含んだ様々な要因が存在します。しかし、実際には長年にわたり隠されてきた存在が、ようやく社会に認識されつつあるということも、こうした背景を考えることで見えてきます。
幅広い世代のLGBTQ+当事者が直面する困難
LGBTQ+当事者は幅広い年代におり、それぞれの年代で直面しやすい課題が存在します。もちろん個人の直面する課題がいつも同じだとは限りませんが、若い世代ではたとえば
- 家族や友人、学校でのカミングアウトの問題
- 学校でのいじめや差別
- 学校での性自認に沿った制服・トイレの利用
などが直面しやすい困難としてあげられます。
では、中高年の当事者ではどうでしょうか?まだまだ可視化されることの少ない、シニア世代のLGBTQ+当事者の直面しやすい課題の例についてご紹介します。
パートナーとの法的関係がないことによる困難
法的に結婚が認められないため、長年連れ添ったパートナーの病気や介護の際に家族として扱われないケースがあります。たとえば、
- パートナーが病院で治療を受けるとき、意思決定に参加できない
- 危篤の際にも、「家族ではない」として面会することができない
などの深刻な問題に直面する場面も…。
またパートナーとの死別の際にも、法的にその関係が認められていないことによって遺産や財産分与などで不利益を被るケースもあります。
カミングアウトの難しさ
若い世代が多様性を受け入れる雰囲気が広がる一方で、年配の当事者は依然として偏見に直面することが多くなっています。LGBTQ+への理解が少ない介護施設や高齢者コミュニティなどでは、カミングアウトをすることのハードルが高いことの他にも、同性のパートナーとの同室入居を断られてしまうなどの課題が生じてしまいます。
今よりもさらに多様な性のあり方に対して理解の少なかった時代に生きてきたことによって、長年自分自身の性のあり方を抑圧してこなければならず、自分のアイデンティティを受け入れることに時間がかかってしまうこともあります。
「中高年であること」によって受ける偏見
今回の記事のテーマでもありますが、「LGBTQ+=若い世代」という社会的なイメージの中で、高齢者がカミングアウトをすることで二重の偏見を受けることもあります。高齢者コミュニティにおける多様な性のあり方に対する理解が不十分なことによって、孤立するリスクも高くなってしまいます。
すべての世代のLGBTQ+が自分らしく生きるために
「LGBTQ+は最近の流行/若い世代だけのこと」
そうした偏見が残る社会では、あらゆる世代のLGBTQ+当事者が自分らしく生活することが難しい現実があります。
LGBTQ+当事者の権利を守るための法整備や、世代を超えた孤立防止の取り組みなどと合わせて、すべての年代でLGBTQ+に関する正しい知識を広め、偏見を減らすことがとても大切です。
「トレンドになっているものだけに注目する」のではなく、「まだ聞かれていない声があるかもしれない」と想像することが、年代に関わらず自分らしく生きられる社会に繋がっていくのではないでしょうか。
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