「男の人いる?」と言われた店員の話
これは、Xジェンダーの自分が職場で働いていたある日のこと…。主人公、スマホ関連の商品の場所でキョロキョロしている60〜70代くらいのおばあちゃんに気づき、声を掛ける。「お客様、何かお探しでしょうか?」
60〜70代の女性「スマホの充電器がほしいんだけど、男の人いる?男の人に見てほしいの。機械に詳しいでしょ?」主人公、びっくりして「えっ!え〜〜〜っと…」性別を理由に対応する人を変えてほしいと言われたのは初めてで、驚きました。自分も理系で機械には詳しかったのですが…。
男性の店員を呼びに行く主人公「あちらのお客様の対応お願いします〜」お客様の中で、「機械に詳しい=理系=男性」という方程式ができていたのでしょう。悔しかったのでこのときはスマホ関連の情報について勉強し、エプロンにも質問しやすいバッジをつけましたが…。ネットでスマホ関連の情報を調べたり、「スマホ商品ならお任せください」というバッジを職場のエプロンにつける主人公のイラスト。
そもそも見た目だけで「機械が得意ではない」と決めつける考え方も、変わっていったらいいと思いました。主人公「決めつけられたのはじわじわ悲しいかも…」こうしたぼんやりとしたイメージで、誰かの可能性を狭めたり、偏見を強めてしまうのかも…と思った出来事です。「異性愛者の男性だろう」「女性らしい人だから◯◯かな?」「外国人だろうな…」「見た目が派手だから…」「身体が大きい人だから…」というたくさんのイメージにいろんな人が押しつぶされているイラスト。

「男の人は機械に強い」の問題点って? -「男の人いる?」と言われた店員の話

「男性は機械に強い/女性は機械に弱い」
「男性は理系/女性は文系」
「男性は理性的/女性は感情的」

そんな価値観を耳にしたことは、きっとみなさん記憶にあるのではないでしょうか。

ある人の性のあり方やアイデンティティに関わらず、見た目で何かを判断されてしまうことがいまだに多く残る社会。今回パレットークでは、読者の方から寄せられた「見た目で機械には弱いはず」と判断されてしまったとあるXジェンダーの方の体験談をマンガでご紹介しました。

ミスジェンダリングの問題

今回の体験談は、Xジェンダーの方によるものでした。

Xジェンダーとは、従来の性別二元論における「男性か女性」には当てはまらない性自認を持つ人のこと。Xジェンダーは日本語圏特有の呼び名で、近しい性のあり方としてノンバイナリーがあります。

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本人が自認するジェンダー(性自認)と異なるあり方として扱うことは「ミスジェンダリング」と呼ばれています。たとえば男性だと自認しているトランス男性に対して、出生時に割り当てられた性別が女性であるからといって女性扱いすることは、当事者のジェンダーアイデンティティを否定し、人格や尊厳を傷つける行為です。

そして男女二元論(バイナリー)な価値観が根強く残る社会では、ノンバイナリーやXジェンダーの方の多くが日常的にこのミスジェンダリングを経験しています。

たしかに私たちが生きる社会では、まちがいなく「女性らしさ/男性らしさ」の規範が存在しています。そのため、誰かと出会ったときに無意識に相手のジェンダーを想定・推測すること自体が直ちに差別的な行為であるとは言えないかもしれません。

しかし実際のところ、その人自身がどのような性自認を持っているかは他者が勝手に判断することはできないはず。しかし今回のエピソードを寄せてくださった方は、見た目から勝手に「女性である(男性ではない)」と男女二元論に則った判断をされてしまいました。

その上で、さらに男性と女性それぞれに対するジェンダーの偏見と決めつけの問題が同時に起きてしまっているのです。

ジェンダーに対する偏見と決めつけの問題

冒頭でも述べたように、たとえば「男性は機械に強い」「女性は感情的だ」といったジェンダーに対するイメージの押し付けは多くの方が経験をしていると思います。

理性的/感情的
文系/理系

といった二文法に即して強引にすべての人を振り分ける社会の傾向は根強く、また「男性脳/女性脳」といった科学的根拠が希薄な信仰もいまだに無批判に多くの人が内面化している場面を目撃することも多いのが現状です。言うまでもなく、機械に得意な女性も感情的な機微に富んだ男性も存在しているのですが…。

実際、今回体験談をお寄せくださった方は理系で、機械にも詳しいXジェンダーの方でした。しかし「女性である」というミスジェンダリングに加えて「だから機械には弱いはずだ」というイメージを押し付けられてしまったのです。

読者の方からのコメント

今回のマンガには多くの共感のコメントを寄せていただきました。中にはまったく似た経験をされた方もいれば、異なる種類の属性について決めつけを経験された方もいました。

一部を抜粋してご紹介します。

「担当いしが女性だったため、信用できないと翌日再び男性医師に診察してもらいにいったおばあちゃんがいます」


「欧米の航空会社のパイロットです。性別だけでよくフライトアテンダントに間違われます。『女性でも飛行機を飛ばせるの?』と問われ、相手がびっくりすることもあります」


「『若いから実力不足でしょ?』みたいな態度をとられたことがありました」


「非アジア圏で生活をしていた時期に東アジア系女性の外見なので勝手に『英語が話せない人』認定をsわれた経験は数えきれないほどあります」

ジェンダーだけでなく、人種/職種/年齢/出身地/服装やヘアスタイルなどなど様々な要因で決めつけられてしまう方が多くいる一方で、ご自身が偏見に気づかずに誰かを決めつけてしまった経験をシェアしてくださった方もいました。

「飲食店のときに男性にお酒、女性にノンアルコールを渡して逆だったことがあります。お客様はまだ学生の新人バイトの私に優しく訂正してくださいました。けどとても恥ずかしかったです。以後勝手な思い込みをしないように気をつけてます」

誰もが少なからず「◯◯といえばこう」というイメージを持っています。また、多くの人がそれに基づいて決めつけられた経験と同様に決めつけてしまった経験を持っているでしょう。

いただいた体験談と、コメントを通してあらためてこうした無意識の偏見は「少しでも気づこうとすること、そして間違えてしまったときに自分の偏見について振り返って見つめること」の大切さを感じさせられました。

パレットークのあちゃこちゃらじおでも、今回のエピソードについてお話ししています。ぜひご視聴ください。

「男性は機械が得意」の問題点ってなに?|あちゃこちゃらじお ep. 20

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