【マンガで解説】異性と付き合っている=異性愛者?「パンセクシュアルの私が思うこと」から考える
みなさんは、誰かのセクシュアリティを「交際相手の性別」で決めつけてしまった経験はありますか?
たとえば、
男女のカップルは皆「異性愛者のカップル」だと思っていた
女性2人のカップルのことを「レズビアンカップル」と呼んでいた
などなど…
こうした何気ない決めつけは、2つ以上の性のあり方に惹かれる人たちの存在を見えなくしてしまうことがあります。
今回の記事ではパンセクシュアルの主人公が登場するマンガを通じて、パンセクシュアル/パンロマンティックというセクシュアリティや、こうしたセクシュアリティの決めつけについて考えてみたいと思います。
パンセクシュアル/パンロマンティックってなに?
パンセクシュアルとはすべての性のあり方の相手に、もしくは相手の性のあり方に関係なく他者に性的な惹かれを感じる性的指向のことで、「2つ以上の性別に惹かれる」という意味での、広義のバイセクシュアルに含まれるとされています。
パンセクシュアルのパン(Pan)はギリシャ語で「すべて」を意味し、また日本語では「全性愛」と訳されることからもわかるように、すべての性のあり方が惹かれる対象となります。
また、恋愛的な惹かれをすべての性のあり方の相手に感じる、もしくは相手の性のあり方に関係なく感じる恋愛的指向は、パンロマンティックと呼ばれています。
パンセクシュアルに対する誤解・偏見
近年、パンセクシュアルやパンロマンティックについても少しずつ知られるようになってきましたが、まだ十分に理解されているとは言えないのが現状です。
そこで以下では、パンセクシュアル/パンロマンティック当事者に対して持たれがちな誤解や偏見について解説していきます。
「誰でも好きになるってこと?」
パンセクシュアル/パンロマンティックであることは「すべての性のあり方が性的/恋愛的惹かれの対象になりうる」ということであって、「誰でも好きになる」という意味ではありません。他のセクシュアリティと同様に、恋愛感情や性的な魅力を相手に感じるかどうかは、その人との関係性や相性によって違います。
「流行に乗ってるだけ/本当は存在しないセクシュアリティだ」
パンセクシュアル/パンロマンティックという言葉が知られるようになったのは最近のことかもしれませんが、そのあり方自体が「これまでは存在しなかった」というわけではありません。たとえ自分が共感できなかったとしても、誰かの経験や存在を否定するような言動は避けましょう。
「モテたがり/浮気しそう」
パンセクシュアル/パンロマンティックは性的/恋愛的な惹かれの対象を表すラベルであり、恋愛のスタイルやモノガミー(一対一の関係)への誠実さとは関係ありません。モテたいと思っているかどうか、浮気をするかどうかは、セクシュアリティにかかわらず人それぞれです。
異性と付き合っている=異性愛者?
マンガの中には、主人公が「過去に男性と付き合っていたため、異性愛者だと決めつけられてしまった」というエピソードが登場しました。
しかし彼女がパンセクシュアルだったことからもわかるように「誰と付き合っているか(あるいは付き合っていたか)」だけで、その人のセクシュアリティを決めつけることはできませんよね。
たとえば一口に「パンセクシュアル/パンロマンティック」と言っても、
- 男性と付き合ったことのあるパンセクシュアル/デミロマンティックの女性
- 男性と付き合っているパンセクシュアル/パンロマンティックの男性
- ノンバイナリー同士で結婚したパンセクシュアル/パンロマンティックの人
- だれとも交際したくないAセクシュアル/パンロマンティックの人
など、どのような関係を誰と築いているか/築いていないかは人それぞれです。
また、男性と付き合っていたことがあるレズビアン女性や、女性と婚姻関係にあるゲイ男性がいるように、これはパンセクシュアルに限らず、様々なセクシュアリティについても言えることです。
誰かのアイデンティティを知らないうちに否定してしまわないためにも、過去や現在の関係性だけをもとに、相手のセクシュアリティを決めつけないよう心がけられるといいですね。
さいごに
今回の記事では、パンセクシュアル/パンロマンティックというアイデンティティについて、またセクシュアリティを交際相手の性別で判断してしまうことの問題点について解説しました。
5月24日はパンセクシュアル・パンロマンティック可視化の日。パンセクシュアルおよびパンロマンティックというアイデンティティへの理解を深め、当事者に対する偏見や差別をなくすことを目的とした記念日です。
パレットークでは今日から2週間にわたり、「パンセクシュアル・パンロマンティック可視化の日」に合わせたコンテンツを発信していく予定です。
この機会にパンセクシュアル/パンロマンティックというアイデンティティについて知り、学んでみませんか?