Aロマンティックってなに?恋愛的惹かれってどういうこと?

みなさんは、「Aロマンティック」を知っていますか?
Aロマンティック(アロマンティック)とは、他者に恋愛的惹かれを感じない、もしくは、ごく限られた状況でしか感じない恋愛的指向のことです。
近年、Aセクシュアルなど性的な惹かれを経験しない性のあり方の認知度も少しずつ高まってきたと感じますが、まだまだAロマンティックや “恋愛的惹かれ” については「聞いたことがない」という方も多いかもしれません。
今回はこのAロマンティックについて、よくある誤解や偏見も交えながら解説していきます。
Aロマンティックの定義
Aロマンティックとは他者に恋愛的惹かれを感じない、もしくは、ごく限られた状況でしか感じない恋愛的指向のことです。
性的惹かれのあり方に関わるアイデンティティであるAセクシュアルが性的指向の一つであるとされるように、恋愛的惹かれに関わるAロマンティックは “恋愛的指向” の一つであると考えられており、LGBTQ+の一部として認識されています。
もちろん、一言でAロマンティックといっても、それぞれ自身のあり方をどのように感じ、どのように言葉にするかは人それぞれです。
Aロマンティックの人の中でも自分の恋愛に関するあり方をどう捉えているかは異なり、グラデーションのように広がっています。このグラデーション(スペクトラム)上での位置によってさらにさまざまなカテゴリーにわけることができます。
(狭義の)Aロマンティック:他の人に対して恋愛的惹かれを抱かない恋愛的指向。
デミロマンティック: 感情的な絆が形成された後にのみ性的惹かれを経験することがある恋愛的指向。
グレーロマンティック:Aロマンティックとアロロマンティック(Aロマンティックではない人)の中間に位置する恋愛的指向。たとえば、恋愛的惹かれを経験するのはごく稀である人、特定の状況でのみ恋愛的惹かれを経験する人、人間関係において恋愛の重要度が極めて低い人などが当てはまります。
こうした、様々なAロマンティックのスペクトラム上のあり方を総称して、Aro(アロ)と表現することもあります。
そもそも「恋愛的惹かれ」ってどういうこと?
Aロマンティックについて考える上で、重要なキーワードとなるのが「恋愛的惹かれ(Romantic attraction)」という表現です。誰かに性的に惹かれたり恋をしたりすることが当たり前とされ、また性的な関係が恋愛の延長線上にあると捉えられがちな社会では、あらためて「恋愛的に惹かれる」とはどういうことなのかを考える機会は少ないかもしれません。
「恋愛的魅力」と訳されることもある「恋愛的惹かれ」ですが、Aro/Aceコミュニティでは多くの場合「他の人に恋愛的な魅力を感じる、または恋愛的な関係を持ちたい(付き合いたい)と思うこと」であるとされています。
そして、Aロマンティックはこの恋愛的惹かれを他者に対して経験しない性のあり方とされています。
Aロマンティックに対する誤解や偏見
近年、少しずつ知名度の高まってきたAロマンティック。ドラマの登場人物などでも描かれることが増えてきました。しかしまだまだ「恋愛するのが普通」とされがちな日本社会には、多くの誤解や偏見が根強く残っています。
「Aロマンティックは愛がなく、冷たい」
Aロマンティックの人たちは誰かに恋愛感情を抱かない、またはほとんど抱かないだけで、「愛がない」わけではありません。そもそも「愛」という言葉は、恋愛だけを指すものではないですよね。恋愛的に惹かれなくても人と強い絆を築くことは可能ですし、恋愛をしないからと言って、思いやりがないわけでも、他人を大切にできないわけでもありません。
「Aロマンティックは病気やトラウマの結果である」
Aロマンティックであることを精神的な問題や過去のトラウマに結びつける偏見も広まっています。しかし、Aロマンティックは生まれつきの恋愛的指向であり、病気や異常ではありません。
「Aロマンティックは未熟で、いずれ変わる」
誰にも恋愛的に惹かれないという状態を「一時的なもの」として軽視する考え方が根強く残っていますが、これも誤りです。Aロマンティックは、特定の年齢や経験に関連する一過性の現象ではなく、れっきとした恋愛的指向の一つです。もちろん、すべての人の性のあり方は時とともに変化する可能性を持っていますが、「今、現時点でその人がどのような性のあり方を自認しているか」を尊重することが大切です。
まとめ
私たちが生きる社会はまだまだ「恋愛して当たり前」とする風潮が根強く、また性的な惹かれや恋愛的な惹かれを一括りのものとして捉えられる場面も多くあります。そんな中で誤解や偏見の言葉をかけられたり、自身で「自分は何かがおかしいのではないか」と悩んだりしてしまうAロマンティックの方もまだまだ多く存在します。しかし、恋愛的な惹かれを経験するか/しないかによって、誰かの人間性を評価することはできません。
まだまだ認知度の低いAロマンティックについて、より多くの人が正しい知識をつけることによって、誰もが自分らしく生きられる社会につながっていくのではないでしょうか。
パレットークでは、Aロマンティックの方の体験談を随時募集しています。こちらのフォームよりお寄せください。
参考
三宅大二郎・今徳はる香・神林麻衣・中村健,2024,『いちばんやさしいアロマンティックやアセクシュアルのこと』明石書店.