惹かれるってどういうこと?— Aセクシュアル・Aロマンティックと4つのアトラクション

「好き」という感情には、いくつもの種類があることをご存じですか?

友達として「この人と一緒にいたい」と思うこと、恋人として「特別な関係になりたい」と感じること、または「この人、美しいな」と思うこと…。これらはすべて「惹かれる」感覚ですが、実はそこには違いがあるとされています。

特に多くのAセクシュアルやAロマンティックなどのアイデンティティを持つ人にとって、この違いを理解することは大きな意味を持つこと。「恋愛しない=誰にも惹かれない」わけではなく、さまざまなアトラクション(惹かれ方)が存在するのです。

この記事では人が感じるアトラクションを4つ(感覚的、 恋愛的、性的,、美的)にわけて詳しく解説します。

4つのアトラクション(惹かれ方)とは?

Aセクシュアルコミュニティの中で、人が感じるアトラクションを4つに分ける考え方がわまった背景には、Aセクシュアルの人々が「自分の感じ方をより正確に説明する必要があった」という経緯があります。

Aセクシュアルと言っても

・恋愛感情を持つ人もいれば持たない人もいる
・性的魅力を感じないがスキンシップを好む人もいる
・特定の人に美的な魅力を感じるが、それは恋愛や性にはつながらない

などの個人差があるからです。

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では、具体的に4つのアトラクションにはどのようなものがあるのでしょうか?

感覚的惹かれ(Sensual Attraction/センシュアル・アトラクション)

感覚的惹かれとは、「この人と触れ合いたい」と思う感覚です。

たとえば誰かと手をつなぎたい、抱きしめたい、髪をなでたいといったスキンシップを好むことがこれにあたります。ただし、これらは「必ずしも性的な意味を含まない」というのがポイントです。

Aセクシュアルの人の中には性的な惹かれを経験することはないけれど、感覚的惹かれを感じる人もいます。たとえば「恋愛関係には興味がないけれど、親しい人とハグするのは好き」といったケースが考えられます。

逆に、感覚的惹かれをほとんど感じない人もいます。人と触れ合うことに興味がない、あるいは苦手という場合もあり、これもまた個人の違いとして尊重されるべきものです。

恋愛的惹かれ(Romantic Attraction/ロマンティック・アトラクション)

ロマンティック・アトラクションとは、「この人と恋愛関係になりたい」と思う感覚です。

一般的に「好き」という言葉はロマンティックな意味で使われることが多いですが、Aロマンティックの人はこの感覚を持たない、または感じにくいことがあります。「友情と恋愛の違いがわからない」「付き合うという概念にピンとこない」といった経験をする人もいます。

一方で、Aロマンティックであっても感覚的惹かれを感じることがあり、「恋人はほしくないけど、スキンシップが好き」という人もいます。

性的惹かれ(Sexual Attraction/セクシュアル・アトラクション)

性的惹かれとは、「この人と性的な関係を持ちたい」と感じることです。

一般的には、恋愛的惹かれと混同されがちですが、恋愛感情と性的欲求は必ずしも一致しません。たとえば、性的に惹かれるが恋愛感情は持たない人(Aロマンティックの一部)、逆に恋愛感情はあるが性的欲求は感じない人(Aセクシュアルの一部)もいます。

また感覚的惹かれと混同されることも多いですが、先述の通り感覚的惹かれは必ずしも性的な意味を持たないスキンシップを好むことをさしています。

Aセクシュアルの人の多くは、この性的惹かれを感じないとされています。しかし、Aセクシュアルであっても性的な行為に対する考え方はさまざまで、「性行為自体には抵抗がない」「恋人が望むなら応じる」という人もいれば、「性的な接触は一切望まない」という人もいます。

美的惹かれ(Aesthetic Attraction/エステティック・アトラクション)

美的惹かれとは、「この人、素敵だな」「美しいな」と見た目に惹かれる感覚です。

たとえば、「この俳優さん、すごく綺麗だな」と思うことはあるけれど、恋愛感情や性的欲求にはつながらない、という経験はありませんか? 

AセクシュアルやAロマンティックの人でも、この感覚を持つことはあります。「美しいと感じること」と「好きになること」は別の感覚であり、美的惹かれを感じたからといって恋愛感情や性的欲求があるとは限りません。

Aセクシュアル・Aロマンティックの視点から見る「アトラクション」

これまで見てきたように、Aセクシュアル・Aロマンティックの人でも「惹かれる」感覚を持つことがあります。ただし、それが必ずしも恋愛や性的関係につながるとは限りません。

「恋愛しない=誰にも惹かれない」わけではなく、どのアトラクションを感じるかは人それぞれです。たとえば、

  • Aロマンティックだけど感覚的惹かれは感じる → 友情ベースでスキンシップを大切にする
  • Aセクシュアルだけど恋愛的惹かれは感じる → 恋愛関係を望むが性的な関係には興味がない
  • どのアトラクションもほとんど感じない → 人との関係を築く上での別の価値観を持つ

こうした違いを理解することで、Aセクシュアル・Aロマンティックの人にとっても自分自身の性のあり方をより詳細に言語化できるきっかけになるかもしれません。また、Aセクシュアル・Aロマンティックの人々の感じ方が「おかしい」「何かが欠けている」とする社会の規範についても考え直すきっかけとなるでしょう。

※アトラクションの種類について、今回の記事で紹介した4つの他に「感情的惹かれ」や「知的惹かれ」なども加えて分析する場合もあります。

「惹かれる」という感覚には、さまざまな種類があり、Aセクシュアル・Aロマンティックの人も、それぞれ異なるアトラクションを感じることがある。そしてどのアトラクションを持つかは人それぞれであり、すべての感じ方が尊重されるべきである。

このことが社会に浸透していくことで少しでも自分自身や他の人の感じ方を理解するヒントになれば幸いです。

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参考:https://lgbtq.unc.edu/resources/exploring-identities/asexuality-attraction-and-romantic-orientation/
https://www.asexuality.org/?q=overview.html