グレーセクシュアルってなに？

2025.03.06

近年、少しずつ知名度が高まってきたAセクシュアル。ドラマや映画の登場人物としても描かれることが増えてきました。SNSのプロフィールで、「Aセクシュアル」「Ace」などの表記を見かけたことのある人も多いかもしれません。

Aセクシュアルの定義としては、『アセクシュアルの可視性と教育のためのネットワーク（AVEN）』による「性的惹かれ（sexual attraction）を経験しない人」という文言がよく引用され、反対に性的惹かれを経験する人は「アローセクシュアル（Allosexual）」と呼ばれます。

ただし、性的惹かれをまったく経験しない人と性的惹かれを完全に経験する人との間にはグラデーションが広がっており、その両極端のどちらにも振り切らないあり方を指すセクシュアリティも存在します。

今回はそのようなグラデーションの中のセクシュアリティを指す、「グレーセクシュアル」について解説したいと思います。

読み込み中...

グレーセクシュアルの定義

はじめに述べたとおり、性的な惹かれを感じるか／感じないかということは、白と黒ではっきりわかれるわけではありません。

そこで、性的惹かれや性的関係を持ちたいという欲求を経験しない「狭義のAセクシュアル」と、反対にそれらを経験する「アローセクシュアル」の中間に位置する人を包括したセクシュアリティの名前が当事者によって考案されました。それがグレーセクシュアル（グレイセクシュアル）です。

具体的にいうと、グレーセクシュアルには以下のような人が含まれます。

  • まれに性的惹かれを経験する人
  • 程度の弱い性的惹かれを抱くことがある人
  • 特定の状況でのみ／特定の相手にのみ性的惹かれを抱くことがある人

グレー（gray/grey）という名前が示すように、グレーセクシュアルはその定義が非常に曖昧であり、それぞれの経験は個人によって大きく異なります。そのため、ここに書かれているのがグレーセクシュアルのすべてではありません。

また上記の例に当てはまるからといって、グレーセクシュアルを名乗らない人や、名乗りたくない人もいます。

デミセクシュアルとグレーセクシュアルの違いって？

デミセクシュアルとは、他者と信頼関係がある場合にのみ、性的惹かれを経験することがあるというセクシュアリティです。

一方、グレーセクシュアルは上記の通り、狭義のAセクシュアルとアローセクシュアルの中間に位置する人を包括するセクシュアリティです。そのためデミセクシュアルは、グレーセクシュアルという傘の下に入るセクシュアリティであるといえます。

つまり、Aセクシュアルスペクトラムという一番大きな傘の下にグレーセクシュアルという傘があり、その下にあるのがデミセクシュアル、と捉えることができます。

ただし、デミセクシュアルを名乗る人の中にはグレーセクシュアルやAセクシュアルとされることに違和感や抵抗感を持つ人もいます。

セクシュアリティについて「自分で名乗ること」と「他者から名付けられること」には大きな違いがあります。本記事で紹介した定義に当てはまるように見える人であっても、そもそも用語を知らなかったり、知った上で自認しない・あえてしたくないという人もいるので、第三者が勝手に当てはめようとすることはやめましょう。それぞれの自認を尊重することが大切です。

グレーセクシュアルのいろいろな性のあり方

グレーセクシュアルは「どのように性的惹かれを経験するか」にまつわる性のあり方です。グレーセクシュアルやAセクシュアルに限らず、恋愛的な惹かれと性的な惹かれが結びつかない人も多くいるので、グレーセクシュアルを自認する人の中にも、恋愛的な惹かれを経験する人もいます。

また、まれに経験する性的惹かれがどのような性のあり方に向かうかによって、「レズビアン」や「バイセクシュアル」のようなラベルと組み合わせてアイデンティティを表す場合もあります。

そのため、セクシュアリティを表す表現として、以下のような組み合わせが可能です。

  • Aロマンティックでグレーセクシュアルのレズビアン女性
  • バイロマンティックでグレーセクシュアルのノンバイナリー
  • ヘテロロマンティックでグレーセクシュアルの男性

など…

私たち1人ひとりの性のあり方は、様々な要素が組み合わさって形作られるもの。自分自身のあり方によりしっくりくる表現や言葉を見つけるヒントにしてみてください。

さいごに

最近は徐々にAセクシュアルについて知られるようになってきましたが、グレーセクシュアルはまだまだ馴染みのない人も多いのが現状です。

また、セクシュアリティについての情報、特にAセクシュアルについては、まだまだ日本語のリソースが少ない状況にあります。

この記事が、グレーセクシュアルについて知りたいと思っている方や、自身のあり方を表す言葉に出会えず悩んでいる方に届くことを願っています。

参考
https://www.asexuality.org/?q=grayarea
https://www.webmd.com/sex/what-is-graysexuality
三宅大二郎・今徳はる香・神林麻衣・中村健，2024，『いちばんやさしいアロマンティックやアセクシュアルのこと』明石書店．