「小さな攻撃性」マイクロアグレッションについて
「マイクロアグレッション」という言葉を聞いたことはありますか?
マイクロアグレッションとは、特定の属性を持つ人との日常のやりとりの中で、意図せず偏見や差別に基づく言動をとってしまうことです。
今回はこのマイクロアグレッションについて、マンガで解説していきます。
マイクロアグレッションって何?
マイクロアグレッションとは、特定の相手に対し、その人が属する集団を理由におとしめるような言葉をかけてしまうことを指します。
マンガでも指摘されているように、差別するつもりがなく、よかれと思って何気なくかけた言葉であっても相手を深く傷つける可能性がある、ということがポイントです。
無意識のうちに抱いていた特定の年齢や性別、セクシュアリティ、障害、人種などに対する偏見が「うっかり」言動に現れてしまった結果が、マイクロアグレッションであると言えるでしょう。
そのため、マイクロアグレッションをしてしまった人は大抵の場合、自分が放った言葉の攻撃性に気付きにくいほか、誰かに指摘されたとしても「そんなつもりはなかったのに」と開き直ったり、責められていると感じてしまうことが多々あります。
では、どうすればマイクロアグレッションを防げるのでしょうか?
マイクロアグレッションをしないために
マイクロアグレッションを防ぐために、まずは自分も無意識の偏見を持っているかもしれないと心に留めておくこと、そしてその自分が抱いている偏見にすこしずつ気づいていくことが大切です。
たとえば、誰かが目立つ行動をとったとき、その行為をその人の属性と結びつけ、「この属性を持っている人はみんなこう行動するんだ」と思い込んでしまったことはありませんか?
マイノリティは特に、そうした偏見の対象になりやすい傾向があります。
たしかに、同じ集団に属していることで、似たような経験や、それに基づいた考え方を共有する場合もあります。共通の経験を語りあうことで女性たちが連帯していった第二波フェミニズムなどは、まさにその例と言えるでしょう。
特定の集団に属して生きることは、ある程度の共通した経験をもたらすことがあり、それらは個人の人生に大きな影響を与えます。
しかし、たとえば「女であること」「ゲイであること」「外国人であること」などは、それぞれが「その人を構成する数ある要素のうちのひとつ」であり、一個人の性質をたった1つの属性によって説明することはできません。
「女ってこうだから」
「ゲイはこうだから」
「外国人ってこうだから」
まずはこういった言葉の背景にある偏見に気づくことが、マイクロアグレッションをしないための第一歩になるはずです。
ここまで、マイクロアグレッションを防ぐ方法について説明しましたが、もしマイクロアグレッションをしてしまったことに気づいたら、どうすればいいのでしょう?
マイクロアグレッションをしてしまったら
人は誰しも、自分でも気づかないうちに、他者に対して思い込みや偏見を持ってしまうものです。
学ぶことを通して自分の中の偏見や差別に少しずつ自覚的になったとしても、ふとした瞬間に相手を傷つけるような言動をとってしまう可能性はあります。
マイクロアグレッションをしてしまったことに後から気づいたら、もしくは「その言葉は問題があるよ」と誰かに指摘されたら、マンガに登場したレイのように、まずはその事実を受け止めて謝ることが大切です。
マイクロアグレッションは「小さな攻撃」だからこそ、指摘したときに「そんな小さなことで」とさらに非難されてしまいがちです。
「単なる気のせいかも」
「気にしすぎなのかも」
というように、マイクロアグレッションにあった人が自己嫌悪に陥らないためにも、周りの人や、マイクロアグレッションを行ってしまった張本人が、その行為の問題性を理解し、非を認めることが必要となってきます。
ただし、「謝ればOKだからマイクロアグレッションをしてしまっても大丈夫」というように開き直ってしまうのは問題です。たとえ「小さな攻撃」でも、積み重なれば大きな傷になってしまうからです。
日常的なマイクロアグレッションの対象になりやすいのは、社会的に立場の弱いマイノリティの人たちです。その人たちがこれまでに受けてきた攻撃や、感じてきた苦しみを他の人が推し量ることはできません。
面と向かって謝られたとしても、その謝罪をどのように受け止めるかはその人次第です。
心から謝罪しても、既に言ってしまった・やってしまったことは取り消せません。だからこそ、なるべく相手を傷つけるような言葉を言ってしまわないように心がけていきたいですね。
差別はたいてい悪意のない人がする
そもそも差別は多くの場合、無自覚のままに行われるものです。
差別的な言動を批判された政治家が、「差別する意図はなかった」「不快に思われたなら謝る」「誤解を招いて申し訳ない」と謝罪ともつかない謝罪を行っている光景をよく目にしますが…。
差別する意図がなかったとしても「差別的なことを言ってしまった・してしまった」ことには変わりありません。ましてや、差別をされた人たちの傷つきを単なる「不快感」と矮小化し、「誤解」という言葉を用いて受け手の解釈に責任をなすりつけるなど、言語道断でしょう。
「差別するつもりがなければOK」という誤った認識も、なくしていく必要があります。
おわりに
本記事では、マイクロアグレッションについて解説しました。
差別するつもりがなくても、偏見に基づいた「小さな攻撃」は、少しずつ積み重なることで、大きなストレスとなって相手を追い込んでしまいます。
上述の通り、マイクロアグレッションをしてしまった側は、大抵そのことに気づいていません。
レイの友人、マミのように「それってマイクロアグレッションかもよ」と後からでも指摘してくれる第三者がいれば、マイクロアグレッションを受けた人が精神を削って「自分に向けられた差別的発言が差別的である理由」を説明する必要はなくなります。
この記事をきっかけにマイクロアグレッションについての理解が広がり、「それってマイクロアグレッションかも」と気づける人が増えていけば嬉しいです。
(文章:𠮷元咲)